【ディフェンダーとレンジの2役】ランドローバーを救ったディスカバリー 後編

公開 : 2020.03.14 20:50  更新 : 2021.12.20 16:42

誕生から30年。最高位へ上り詰めたレンジローバーに対し、走破性重視の初代ディスカバリーは、クラシックなランドローバーを味わえる1台です。窮地のランドローバー社を救った、いまのSUV人気にも通じる1台を見ていきましょう。

田舎町に住む家族の暮らしにピッタリ

text:Jack Phillips(ジャック・フィリップス)
photo:Land Rover UK(英国ランドローバー
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
ゆとりを感じさせる大きさを持つ、7シーターのランドローバー・ディスカバリー。学校への子供の送り迎えや、沢山の物資を積むのにも理想的だった。田舎町に住む家族の暮らしにピッタリだといえる。

ディフェンダーのような、張り出したホイールアーチ・ボディに乗る時代は終わった。インテリアには、レンジローバー並の特別な質感は必要ない。サッカーで泥だらけの子供と、犬、ピクニックに出かけるためのオフローダーだ。

ランドローバー・ディスカバリー(シリーズ1)
ランドローバー・ディスカバリー(シリーズ1)

ヘッドレストの横やダッシュボードの上部など、キャビンのに取り付けられたグラブハンドルが、普通のクルマより高い位置にボディがあることを気付かさせてくれる。草地を走って近道をしても平気だし、雪が降っても、ひるむ必要はない。

インテリア・デザインを手掛けたのは、コンランデザイン・グループ。外部デザイナーを導入した初期のクルマといえるが、淡い色合いと濃いめのソナー・ブルーとのコントラストが綺麗だ。丈夫で広々しており、現代的に見える。

ディスカバリーから外を眺めると、着色された窓ガラスによって青いフィルターが掛けられ、少し変わった印象を受ける。だが、リアのスペアタイヤがオフローダーらしい。ボディサイドのステッカーには山脈のイラストが入り、走破性を誇示するようだ。

一番に気がつくのは、ディーゼルエンジンの力が心もとないことと、快適性と視界の良さ。グラスハウスが大きくクルマは小さく感じられ、不思議と見た目は時代遅れには感じられない。

大衆向けのレンジローバー

シンプルなデザインは、時代の移り変わりもうまく乗り越えたと思う。誕生から30年を迎えたが、歳を感じさせず、垢抜けた印象を受ける。ディスカバリーは、ランドローバー社としては初めて、コンピューターを用いて設計が行われた。

2ドアのディスカバリー1に乗り込んでみる。見慣れた光景だが、最初期モデルからわずかに手直しを受けている。

ランドローバー・ディスカバリー(シリーズ1)
ランドローバー・ディスカバリー(シリーズ1)

ダッシュボードはエアバッグを内蔵するため、奥行きと高さが増えている。ステアリングホイールは肉厚になり、計器パネルのデザインも少し手直しを受けた。

ディスカバリーに影響を受けて誕生した多くの新しいSUVは、技術的には進化している。だが、ランドローバー社のものであっても、初期のディスカバリー1から得られる雰囲気や感触とは一致しないところがある。

やはり、大衆向けのレンジローバーなのだ。背の高いボディの下側には、同じラダーフレーム・シャシーと、1988年以前のドライブトレイン、ロッキングデフが出番を待っている。

フロントガラスもレンジローバーと同じものを用いているが、ドアハンドルはモーリス・マリーナのもの。テールライトはフレイトローバーのバンからの流用品だが、刻印されているロゴは最終的に変更を受けた。

200Tdiには、直噴ターボディーゼル・エンジンを搭載する。量産ユニットとしては初めての1つに数えられ、プロジェクト・ジェミニの開発コードで、3年の期間を経て誕生した。

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