【ディフェンダーとレンジの2役】ランドローバーを救ったディスカバリー 後編

公開 : 2020.03.14 20:50  更新 : 2021.12.20 16:42

キャメル・トロフィーの公式車両に

エンジンブロックは強化され、新しいインタークーラー通気のギャレット製T25ターボを採用。以前のターボディーゼルより高いタフさを獲得している。燃費も10.6km/Lと、何とか許容範囲。

排気量は2.5Lで、最高出力は112psを発生。非常に長い直線が必要だったが、最高速度は148km/hに届いた。

ランドローバー・ディスカバリー(シリーズ1)
ランドローバー・ディスカバリー(シリーズ1)

ディスカバリーの発売当初からビュイック由来の3.5LのV8エンジンも選べ、90年代半ばまでは現役として残っていた。しかし、1度の満タンで1350kmほど走れたディーゼルエンジンの方が、人気は高かった。

優れたオフロード性能を証明するため、ディーゼルエンジンの200Tdiは、1990年のキャメル・トロフィーのオフィシャル車両にもなった。熱帯雨林やシベリアのタイガを走破する、世界一過酷なレースといわれていた、オフロードラリーだ。

総長1600kmのルートに挑んだディフェンダーの車群。ディフェンダーの実際の開発は、レンジローバーのボディを偽装で被り、英国のほかオーストラリアで行われている。熱帯のデスバレーや、氷点下40度のカナダでもテストを受けているから、ラリーコースは想定の範囲内。

ディスカバリーは7年間、キャメル・トロフィーのイメージリーダーとして活躍した。初めの4年間は200Tdiで、残りの3年間は300Tdiが登用された。山吹色のディスカバリーをご記憶にある読者も多いだろう。ディスカバリー2の登場とともに、ディスカバリー1は退いている。

味のあるSUVとして魅力的な選択肢

その後、キャメルトロフィーにはランドローバーフリーランダーが投入される。しかし、ディスカバリー時代と異なり、各チームは装備をクルマに積みきれず、ディスカバリーがサポートとして入る必要があった。

1990年になると、ディスカバリーは4ドアボディへ進化。SEグレードにはルーカス製インジェクションV8と、パワーウインドウ、集中ドアロック、エアコンが採用された。新しいレンジローバーも登場したが、豪華装備を備えていたディスカバリーと共食いになることはなかった。

ランドローバー・ディスカバリー(シリーズ1)
ランドローバー・ディスカバリー(シリーズ1)

5年後にフェイスリフト。ディスカバリーはランドローバー社全体の売上の3分の2を占める大黒柱へ成長する。ディスカバリー2が発表されるまでに、40万台近くが製造されている。

「レンジローバーに並ぶ機能と、三菱ショウグン(パジェロ)に並ぶ価格で、ランドローバーはオフロード市場で最も強力な地位を得るであろうモデルを生み出しました。実用性と英国らしさの素晴らしい融合で、世界を席巻するでしょう」 と、当時のAUTOCARはディスカバリーを紹介した。

ディスカバリーは、窮地にあったランドローバー社を救ったのだ。

生産終了となったトヨタFJクルーザーフォードブロンコは、味のあるクルマとして今でも北米での人気が堅調。英国らしさを備えた快適なランドローバー・ディスカバリーも、同じ立ち位置にあるといえる。

現在の取引価格は5000ポンド(71万円)前後。いまだからこそ、非常に魅力的な選択肢といえるだろう。

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