テスラ・モデルS
公開 : 2013.08.27 17:00 更新 : 2017.05.29 18:47
■どんなクルマ?
メルセデス・ベンツSクラス・サイズの電気サルーンが英国に届けられた。テスラ・モデルSだ。その最初の英国でのロード・インプレッションである。
アメリカの孤高の自動車メーカーは、コツコツとその生産を続けている。市場がバッテリー・モデルの導入に尻込みをしている現在でも、テスラは2015年までに出す新しいモデルを含み、精力的な活動を続けて行ってきているのだ。
ただし、ロータス・ベースのロードスターは頓挫した。しかし、クロスオーバーSUVは、次の2年の間に市場に登場する予定だ。確かに、まだまだその生産ペースが速くないために、一般の市民がEVを好んで選択するまでには至っていない。とはいうものの、2013年の第一四半期では、アメリカ市場において、テスラ・モデルSは、メルセデスのSクラスやレクサスLS、そしてアウディA8よりも大きなセールスを記録したのである。
■どんな感じ?
パフォーマンス、サイズ、レンジーーそのどれをとっても今まで経験していたEVとはモデルSは全く異なる。まず、第一にラグジュアリーな5シーター・サルーンであるということだ。しかも、キッズ用のシートをトランクに装備すれば7シーターともなる。ポルシェ・カイエン・スタイルのハッチバック風リア・エンドのブート・スペースは1800ℓと非常に大きい。
主にアルミニウム製となるボディは、同クラスのガソリン・エンジン・サルーンよりも僅かに100kgほど重いだけに収まっている。エンジン・パワーは410bhp、トルクは61.2kg-m。ただし、トップスピードは210km/hに抑えられている。
その航続可能距離は、ヨーロッパのNEDCテストでは482km、アメリカのEPAの評価でも418kmという値が公表されている。これは床の下に納められる85kWhのリチウム・イオン電池のお陰だ。その容量は日産リーフの4倍以上だ。
そのバッテリーに典型的な32Aの英国の路上チャージング・ポストから充電すると、フル充電までに15時間の時間を要する。単相のハイパワーの壁掛け型チャージャーであれば、1時間に48km走れるだけのチャージが可能。フル充電まで10時間だ。更にツイン・チャージャーであれば96km/時となる。3相の”スーパーチャージャー”は、来年から英国で展開される予定だが、これを使えば85kWhのバッテリーの50%が30分で充電可能となる。
市場にリリースされた最初の妥協の必要ないEVの価格は、£80,000(1,200万円)以上となるが、これが法外かと言えばそうではない。8.1km/ℓの燃費を持つアウディS8は、90ℓのガソリン・タンクを一杯すれば720kmの走行が可能で、価格は£78,000(1,190万円)からとなる。ただし、英国ではカンパニー・カー・タックスがアウディは年間£11,000(168万円)もかかることになるし、同じくランニング・コストという面では、テスラ・モデルSは夜通りのチャージにオフピーク・レートの電気料金が適応されればその金額は£5(760円)にも満たないのである。
インテリアは、コンセプト・モデルのような造りで、極く僅かなスイッチギアしか存在しない。そのアップルで設計されたようなアヴァンギャルドなデザインは、センターに備える17インチのタッチ・スクリーンが特徴的。そのセンターにレイアウトされたタッチ・スクリーンでは、ナビゲーション、エネルギー使用モニター、換気、エア・サスペンションのセッティング、ヘッドランプ・コントロールなどを行う。また必要であればウェブ・ブラウジングも可能だ。
イグニッション・バレルはなく、スターター・ボタンもない。単純なコラム・ギア・セレクターをオートマティック・ハンドブレーキがあるだけだ。ブレーキ・ペダルをプレスした瞬間、パワートレインがオンになる。
低速ではとても静かで、21インチのホイールを履くにもかかわらず乗り心地はフラットで快適だ。
エネルギーはスロットル・ペダルを踏み込んだ瞬間から再生して直ぐにマックスのトルクが発揮される。また、スロットル・オフでの減速が非常によく効くため、ブレーキは停車するときぐらいしか必要がないほどだ。
しかし、このクルマの正確な評価は延期したいと考えている。その理由は、英国の制限速度でもある112km/h以下では速いスーパー・サルーンではあるが、それ以上の領域でどうであるかをテストしなければならないこと。テスラの最も安定したシャシー・セッティングでも明らかなスーパー・サルーンとは呼べず、より正確な検証が必要なこと。そして、本当に482kmの航続距離があるかどうかを、時間を掛けて究明しなくてはならないからだ。
■「買い」か?
われわれは、この先進的でランドマークとなるべきモデルを完全に理解するまで時間を掛けなくてはいけない。2、3時間のドライブではその結論を出すのは早急だと考える。
プレミアムな価値は確かに存在するが、完璧な大型サルーンではないことは現実だ。しかし、多くのメーカーがこれからの開発において、ステラ・モデルSをひとつのベンチマークとすることになるだろう。また、その電気エネルギーの使用方法について、われわれの認識を変える1台ともなるだろう。
そして、誰もがこの若い自動車メーカーの作品に有無を言わず飛び込む有機もないのも事実であろう。
(マット・ソーンダース)
テスラ・モデルS
価格 | £88,000(1,345万円) |
最高速度 | 210km/h |
0-100km/h加速 | 4.2秒 |
燃費 | – |
CO2排出量 | NA |
乾燥重量 | 2108kg |
エンジン | 3層モーター |
最高出力 | 410bhp/5000-6700rpm |
最大トルク | 61.2kg-m/0-5100rpm |
ギアボックス | シングル・スピード |