【サーキット試乗】アルピーヌ新型A110 S ピュアと比較 エンジンスペック/車重を検証

公開 : 2020.03.07 10:20  更新 : 2021.12.28 00:07

どんな感じ?

エンジン性能曲線図を見ると、6400rpmを超えたくらいで急激にトルクが低下するが、失速感はほとんどない。

とは言えレブリミットにおけるトルクはおよそ28kg-m。体感的には7000rpmまで一気に到達する。頭打ち感でアップシフト・タイミングを図るのは実質不可能であり、マニュアル変速による全開加速ではタコメーターによるレブリミットの確認は必須だ。

A110と同じエンジンだが、ターボのブースト圧を0.4bar増加。
A110と同じエンジンだが、ターボのブースト圧を0.4bar増加。

7速DCTの減速比は標準系と共通。レブリミットも同じなので各速の守備レンジも共通している。

しかし、5000rpm以上の加速の伸びは明らかな違いがある。

標準系(252ps)は穏やかに加速を鈍らせていく。タコメーターを確認するまでもなく、そろそろかなと思わせる予兆感にも似た感覚だ。レブリミット直前では間延びした感じがあり、6000rpmを超えた辺りでアップシフトさせてもロスった印象はない。シフトタイミングは6000-7000rpmの間に随意に、なのだ。

6000rpmでアップシフトしては「S」のパワーアップ効果は半減してしまう。そこが一番美味しいのである。

レブリミットまで使い切るのが「S」の速さ。そこが昂揚感にも繋がるのだが、それはストレスにも繋がる。

ハンドリングは?

時間を重ねて乗り慣れてしまえば無問題だろうが、初見で、サーキット2周で色々と試してみる、となると特性を押さえた精度の高いドライビングはけっこう疲れてしまう。まぁ、歳のせいというのもあるのだが……。

精度の高い操作の要求はハンドリングも同様である。

A110 Sの内装はオレンジのステッチ(A110はブルー)。
A110 Sの内装はオレンジのステッチ(A110はブルー)。

A110の操縦性は決して神経質ではなく、べたグリップからリアを流し気味にトラクションで押し込むような走りまで、安定したコントロール感覚を示す。

スリップアングルの加減等々の変化に対しても自転(ヨー)軸が安定しているので、程々状態から限界まで同じような感覚で操れてしまう。これは標準系も「S」も共通している。

しかし、OSUS特性では「S」は若干アンダーステア傾向。

正しくはトラクションを優先した設定。パワーが無駄にスリップアングル増に流れないように前後輪の接地バランスやデフの差動制限(ブレーキ制御LSD/トルクベクタリング)も制御されている。

つまり、クルマの持つポテンシャルを最高効率で引き出せるようにしたのである。

ちなみに標準系同様にステアリングに配されたスポーツボタンにより、自動変速およびESP(LSD制御)をノーマル/スポーツ/トラックの3モードから選択できるが、ノーマルモード以外の制御特性は「S」専用だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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