【サーキット試乗】アルピーヌ新型A110 S ピュアと比較 エンジンスペック/車重を検証

公開 : 2020.03.07 10:20  更新 : 2021.12.28 00:07

サスの違い サーキットで実感

標準系よりも硬められたサスも、精度の高いドライビングが前提である。

中立からのロールの入りは意外と穏やかだが、すぐに抑え込まれる。神経質さも揺れ返しなどの不要な挙動もない引き締まったストローク制御だ。

ステアリング上端のマーカーもオレンジに。
ステアリング上端のマーカーもオレンジに。

過不足なく正確に反応。スポーツ感覚を高めるための演出もないので純粋にコントロールに没頭できる。

ただ、負荷を入れるのも抜くのも、すべてペダルとステアリング操作次第。

標準系なら切り換えし時の動きは多少粗い操作でもサスのほうで程よく繋げてくれるが、「S」はその過渡域の動きもドライバーがコントロール。粗く扱えばそのように反応する。

反応の分解能が標準系よりも一桁以上高まったと言い換えてもいいだろう。故にポテンシャルを引き出すには論理的に正しく精度の高いドライビングが求められる。

もちろん、それらはサーキットでの限界走行時の話で、一般的な走行レベルでは乗り心地が多少硬めになったくらいの違い。限界走行時の硬さがそのまま乗り心地悪化に繋がらないのは、中立からの動き出しが穏やかなサスチューンの賜である。

「買い」か?

+40psで専用サスチューンのローダウンサス。カーボンルーフや専用の内装トリムなどもあって、一目で「S」と分かる内外装。

利便装備が同等となるピュアとの価格差は73万円(車体色:白/青の場合)。性能視点で特別なスポーツカー求めるドライバーならA110 Sは買い得かもしれない。

オレンジ塗装のブレンボ製ブレーキキャリパーが「S」の証。
オレンジ塗装のブレンボ製ブレーキキャリパーが「S」の証。

ただ、ごくごく個人的な評価、というより嗜好的にはピュア(リネージ)のほうが好感触。「舞姫」のイメージなのだ。

「S」はA110の持ち味を毀損させずに限界走行での高効率化とポテンシャルアップを図ったが、その分だけ「アスリート」っぽくなっている。

たぶん、A110を好きなドライバーほどピュアと「S」の走りの違いは悩ましい問題である。スペックでは図れない部分に差があり、しかもその差は「好み」の領域なので尚更だ。

「S」か ピュアか

別視点として、サーキット走行まで含めて見れば、ショートサーキットならピュア、高速サーキットなら「S」。

その中間の筑波は悩ましい。

当日はA110と「S」を同じコースで比較試乗することができた。
当日はA110と「S」を同じコースで比較試乗することができた。

ピュアはドライビングミスに鷹揚だが、「S」は厳しい。

精度の高い操作を維持し続けられれば「S」が意のまま。集中力よりリズム感で運転するならピュア。これらの違いも、エンジン性能に準えればレブリミット手前1000rpmのトルク特性みたいなもので、どちらもしっかりとA110らしさが土台にある。

最終的な結論は「お好きなほうをどうぞ」なのだが、決して軽い問題ではないのはこれまで述べた事で多少は理解してもらえると思う。

そして、どう評価すべきかはとても悩ましいのだが、A110ファンにとってはそれも魅力の深化となるはずだ。

アルピーヌA110 S スペック

価格:899万円
全長:4205mm
全幅:1800mm
全高:1250mm
最高速度:260km/h(参考値)
0-100km/h加速:4.4秒(参考値)
燃費:12.8km/L(WLTCモード 仏UTAC測定値)
CO2排出量:-
車両重量:1110kg
パワートレイン:直列4気筒1798ccターボ
使用燃料:ガソリン
最高出力:292ps/6420rpm
最大トルク:32.6kg-m/2000rpm(参考値)
ギアボックス:7速DCT
乗車定員:2名

「S」では前後の「ALPINE」のエンブレムはブラックになる。
「S」では前後の「ALPINE」のエンブレムはブラックになる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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