【まるでイタリアンレーサー?】JNSスペシャル 素晴らしきホームメイドマシン
公開 : 2020.03.21 18:50
エンジンはルノー製
ボンネットを取り外すとエンジンを目にすることが出来たが、それは予想とは異なるものだった。
「あるクラブメンバーが買い手のつかないルノー5を2台所有していたのですが、そのうちの1台はゴルディーニ・ターボでした。なんとか2台まとめて200ポンド(2万7000円)で手に入れると、このメンバーの納屋で分解して必要なパーツを取り外しています」
「後輪駆動の場合にはプロペラシャフト用のスペースを確保する必要があるため製作が複雑になります。ですから、ゴルディーニのエンジンを5に搭載していた時と同じように、ギアボックスを前に縦置きした方がはるかに簡単だと思ったのです」
「お陰でドライブシャフトやウィッシュボーンとトーションバーのサスペンション、さらにブレーキとハブはそのまま使うことが出来ました」
ナッシュは長い間ターボチャージャーをどうするか悩んでいた。
ルノー5ではエンジン前方にタービンが置かれていたが、彼はJNSのラジエーターを自らが望む低くほっそりとしたボディスタイルが実現できるよう配置したいと考えていたのだ。
「結局、ターボを搭載しても不具合のもとになるだけだと判断して取り外すとともに、減ったパワーをカバーすべく、圧縮比が高くなるようピストンを交換することにしました」
DIY精神と柔軟な思考の融合
これほど見事なマシンを、これほどわずかなコストで創り出すことが出来た秘密は、ほぼすべてを自らが行うというナッシュの姿勢と、パーツ供給に関する彼の柔軟な思考の融合にあった。
「いくつかの重要な部分の溶接は専門家に任せています」と彼は言う。
「リアのトレーリングアームといった部分です。シトロエン2CVのものを流用していますが、そのままではリアタイヤの位置がかなり後ろに下がってしまうため短縮する必要があったのです」
「ファイバーグラス製ボディの成形やパネルの制作はすべて自分で行っていますが、塗装はプロに任せています」
最初にブランズハッチでJNSを目にした時、これは機械工学の知識とデザインの経験を兼ね備えた人物の作品に違いないと思った。
「エンジニアの見習いをしたことはあります」とナッシュは言う。
「ですが、最終的にはかつてイングランドとウェールズの電力供給を担っていた中央発電委員会向けに図面を書いていました。引退する前にはダンジネス原子力発電所の運転マニュアルのイラストを担当しています」
それで納得が行った。
ガレージの壁を飾る見事なJNSの断面図は、このクルマを創り出した人物の手によるものだったのだ。