【まるでイタリアンレーサー?】JNSスペシャル 素晴らしきホームメイドマシン
公開 : 2020.03.21 18:50
はるかにドキドキする体験
希少なスーパーカーのステアリングを握る時は常にワクワクする。
ワンオフのコンセプトモデルであれば、その制作費や制作に要した時間を思いやや緊張する。
だが、それでもこうしたモデルのバックには巨大な自動車メーカーがいるのだ。
JNSのドライビングははるかにドキドキする体験だ。
3万ポンド(412万円)の保険は掛けてあるが、お金の問題ではない。
もし万一のことがあれば、このクルマを修理するためナッシュはふたたび多くの時間を費やす必要に迫られる。
つまり、慎重に慎重を重ねる必要があるということだ。
かつてヴォクゾール・ビザに取り付けられていた余裕のあるシートに腰を下ろすと、トライアンフ・ドロミテから取り外したホワイトダイヤルのメーター(コストは10ポンド/1400円だ)が目に入るが、ナッシュはレトラセットの文字シールを使って文字盤を自作している。
5ポンド(690円)のトイレから取り外した市松模様のアルミニウム製フロアで休憩していないときの足は、トライアンフ・スピットファイアから流用したペダルを踏み付けることになる。
いまや自然吸気となったゴルディーニエンジンには、もともとナッシュが所有していた2基のウェバーDCOEキャブレターが組み合わせられているが、エアフィルターはスポンジシートと鶏舎用の金網を使ったお手製だ。
限られた予算しかなければ、高価なK&Nのフィルターなど購入する気にはならないだろう。
誇るべきマシン
見事なエンジンサウンドだ。決してうるさいわけではなく、吸気音と排気音が見事にバランスしている。
これほどの情熱を傾けて創り出されたモデルを批判することなどできるだろうか?
ほとんど文句のつけようがない。
確かにブレーキペダルのストロークはやや不足しており、わたしならサーボも付けなかっただろう。
さらに、シフトレバーにもタイトさが足りないかも知れない。
ナッシュもこうした点を何とかしようとしたが、これが彼の限界であることを認めている。
だが、こうしたことはほんの些細な問題でしかない。
このクルマの基本的なダイナミクス性能は、個人が創り上げたマシンとしては驚くべきレベルに達している。
ステアリングは見事にダイレクトで軽く、わずか112psのパワーのお陰でトルクステアとは無縁だ。
だが、なかでも最高なのがその乗り心地だろう。
心地よさとしなやかさに溢れている。
そして、わずか車重580kgのJNSは十分な機敏さを備えてもいる。
ナッシュはこのクルマでル・マンまで行きノートラブルで戻ってきたと言う。
ガレージの扉を開け、このマシンのタマゴ型をしたグリルを見る度に、彼は自らの作品を誇りに思うに違いない。
番外編:消えゆくアート
1950年代から60年代にかけて、特にレース用では一般的だったゼロから製作するハンドメイドマシンだが、いまや希少な存在となっている。
ゴードン・マーレイ初の作品は、ロータス7に強い影響を受けたスペシャルモデルであり、彼が自らデザインしたスペースフレームをベースにしていた。
JNSスペシャルの写真をまだマーレイに見せたことはないが、おそらく感激するに違いない。