【007最新作の出演車両を体験】本物のDB5とレプリカ 見た目はそっくり 中味は別物
公開 : 2020.03.19 18:35
痛めつけられるため?
それでも3mも離れていればほぼ見分けがつかないほどよく似ており、走行中であれば言うまでもない。
さらに、このうち1台にはカーチェイスをすれば当然付くであろうボディのキズを再現するためのフィルムが貼られている。
キャビンの違いはさらに大きい。
オリジナルのDB5であれば、大量のクロームに囲まれたインストゥルメントパネルや、いまでは考えられないほど華奢なシフトレバー、さらには巨大なウッドリムのステアリングホイールを第一に考えて調整するしかないシートポジションといったものが目につく。
実際にステアリングを握ってみても、そのドライビングフィールは確かに特別だが、やはりこのクルマが創り出された時代を感じないわけにはいかない。
それでも、オリジナルのストレートシックスは低速ではやや力強さに欠けるものの、高回転まで回せば荒々しさとともに驚くほどのパワーを発揮する。
だが、スローでノンアシストの極端に重いステアリングと少ないフロントグリップ、そして大きなボディロール、さらには7桁ポンドにも達するというこのクルマの価値が、ハードに走らせようという気持ちを躊躇わせる。
つまり、オリジナルのDB5で高速スタントをやろうなどと考えるのは、まったく正気の沙汰ではないということだ。
だが、レプリカであれば話は別であり、このクルマはまさに痛めつけられるために生み出されたと言える。
Q or M?
ダッシュボードにはインストゥルメントパネルの替わりに穴が開いており、スピードメーターとレブカウンターだけが収められている。
ウッドリムのステアリングはオリジナルとよく似ているが、レース用カーボンファイバー製バケットシートに対してはるかに近く設置されている。
APレーシング製ペダルボックスと巨大な油圧式ハンドブレーキ(決して使ってはならないと厳しく言い渡されていた)、さらにはアストンが明かしたがらなかったエンジンとギアボックスの出自を物語るかのような、見慣れた形状のシフトレバーが見える。
公式発表では約345psを発揮する自然吸気ストレートシックスだと言われているが、このクルマはQの研究開発機関ではなく、Mディビジョンからやって来たに違いない。
さらにこのスタントカーはまさに怪物マシンであり、その落ち着いたスタイリングとは裏腹の、驚異的な走りを見せる。
わずか1000kgの車重によって、このクルマのパワーウェイトレシオはオリジナルのDB5の2倍以上に達しており、はるかに強固なボディにラリークロスマシン用のサスペンションを組み合わせている。
油圧アシストのステアリングのフィールは極めて正確で、オリジナルモデルとはまったく異なる瞬時のレスポンスを返してくる。
そのか細いタイヤサイズからは考えられない程のグリップを発揮しており(当時のトレッドパターンが刻まれているのはレース用タイヤのコンパウンドだ)、映画で見せたドリフトシーンを思えば、このクルマのステアリングは驚異的なニュートラルさを実現していると言える。