【新時代のグランドツアラー対決】ポルシェ・タイカン vs ポールスター1 vs メルセデスAMG GT 63 S 前編
公開 : 2020.04.04 07:20 更新 : 2021.02.10 17:27
スペックシートが語る実力
ポルシェ初のEVはどんな時も妥協を感じさせることはなく、このクルマの実力はステアリングを握るよりも、そのスペックシートを見た方がはるかに容易に理解することが出来るだろう。
ローンチコントロールを使えば、最大762psと107.0kg-mのパワーとトルクを発揮し、0-100km/h加速はわずか2.8秒、最高速は259km/hに達するとともに、4つの十分なサイズを持つシートを備え、まったく排気ガスを排出しない。
これほど多くのことを、1台のクルマが実現しているのだ。
タイカンでトップモデルとなるターボSであれば、仕様にはよるもののWLTP値で388kmから412kmの航続可能距離を確保するとともに、十分な能力を持つ急速充電器があれば、5%から80%容量まで23分以内で充電することの出来る急速充電機能を備えている。
確かに依然として350kWの容量を備えた充電ステーションは希少な存在だが、高速のサービスエリアではその数を増やしつつあり、大陸欧州であれば今後数年内には(内燃機関モデルとまったく同じという訳にはいかなくとも)タイカンでも1日1000kmを走破するようなロングツーリングが可能になるだろう。
それでも、EVでこうしたロングツーリングを行う場合、最初から決められたルートとスケジュールに従い、実質的には急速充電ステーションの場所に左右されるような旅を楽しめるかどうかという点が問題となる。
洗練された高級感
もし、おおよそのルートだけを決めた後は、なるべくひとの通っていない道を自らの冒険心に従って選択し、ドキドキしながら燃料補給を行うような旅がお好みであれば、おそらく選ぶべきはEVではない。
そして、EVでそんな旅が出来るような未来はもしかしたら来ないかも知れないのだ(その答えはいずれ分かるだろう)。
いずれにせよ、EVのGTモデルが利便性でGT 63 Sを凌駕するにはまだ時間が必要なことは間違いない。
この3台のなかで、もっとも純粋な所有欲を満たしてくれるのはポールスターだ。
実用性ではメルセデスに遠く及ばず、2+2のシートレイアウトは例え後席に座るのが小さな子供であっても、短距離移動でしか役に立たない。
さらに、このクルマの複雑なパワープラントはトランクスペースまで侵食しており、トランクスルーで長尺物を積み込むなど諦めるしかない。
だが、例えそうだとしても、ふたりで旅するポールスターには、AMGやポルシェを凌ぐ豊かさと快適性、そして高級さが備わっている。
タッチスクリーンの技術ではタイカンの方が進んでいるとは言え、上品さではポールスターが上であり、AMGの方がより広大なスペースを備えスポーティでもあるが、このクルマのキャビンにはロングツーリングを快適にしてくれる、洗練された高級感が横溢している。