【標準シャシーでLSDレスのR.S.】ルノー・メガーヌR.S.280(1) 長期テスト
公開 : 2020.03.14 20:25 更新 : 2021.03.05 21:34
フランス産ホットハッチの代表といえる、ルノー・メガーヌR.S.。不動の王者、VWゴルフGTIの領域にどれだけ迫っているのか、長期テストで検証していきます。選んだクルマはベーシックなグレード。上位グレードとの差も気になります。
初回 粒ぞろいだったルノー・スポールのホットハッチ
ビジネスで専門家からの高い評価と、商業的な成功を収めたいのなら、自動車メーカーに意見を仰ぐと良いかもしれない。高い収益を得るのに長けているルノー。少なくとも新しいルノー・メガーヌは先代より優れていると思う。筆者が仕事で試乗している限り。
秀でたホットハッチを生み出すことが、以前から得意だったルノー。でも、最新のルノー・メガーヌR.S.は今とは少し違ったクルマでもいい、とも思う。
以前からルノー・スポールは、素晴らしい体験を与えてくれる、前輪駆動モデルを生み出すブランドだった。その思い出は今から10年以上前にさかのぼる。
これまで運転したホットハッチの中で、最高の10台を選ぶという課題に筆者が答えるとする。少なくともその内の4台は、ルノー・スポールが手掛けたクルマがランクインするだろう。
その4台は、ルノー・クリオ(ルーテシア)182トロフィーと200カップ、メガーヌR26Rと265 RB8。夢中にさせるクルマは、間違いなく自分の記憶に深く刻まれている。
年代が異なるだいぶ先輩のプジョー205GTiや2代目フォルクスワーゲン・ゴルフGTIなどと並ぶ、敬意を払いたいと思えるクルマだ。順列はつけにくい。
期待のホットハッチとして、新しい長期テストに加えることになったモデルが、フレイム・レッドのルノー・メガーヌR.S.280。わたし単独で進めるものではないけれど。
ダウンサイジング・ターボを積んだ現行型
若いロードテスターのリチャード・レーンとサイモン・デイビスは、筆者ほどルノー・スポールに対しての期待や思い入れはなさそう。よって、より公正な判断をしてくれるだろう。
特に新しいルノー・メガーヌR.S.は、ルノー・スポールの戦略的な開発が施されたクルマ。長期間乗ることでの印象の変化や、燃費など、確かめたいことはいくつかある。
2010年代の初め、ルノーの経営陣はファクトリー・チューンのR.S.モデル構成を改める決定をした。フォルクスワーゲンがGTIラインで得ている利益と人気を、羨ましく感じたのだろう。
近代的なホットハッチとして組み直すこととなった。日常的なクルマとして魅力を高め、技術的に洗練され、ほのかなプレミアム感を匂わせるクルマとして。
2012年に先代のルノー・クリオ(ルーテシア)R.S.が登場。デュアルクラッチ・トランスミッションのみの設定で、ダウンサイジング・ターボエンジンを搭載していた。
完成度の高い、自然吸気のホットなクリオ(ルーテシア)で育んできたファンを、新型でも維持することをルノーは明確に望んでいた。だが英国での販売台数の変化を見ると、望んだ通りにはならなかったようだ。
現行のメガーヌR.S.280が登場したのは2018年。前回のクリオ(ルーテシア)R.S.が犯した間違いと、同じことを繰り返していないだろうか。
エンジンは2.0Lの自然吸気から、環境に優しくも回転フィールで劣る1.8Lターボへスイッチ。高性能版メガーヌとしては初めて、デュアルクラッチATが組み合わされている。ただし今回、ルノー・スポールはマニュアルもちゃんと用意している。