ロードテスト メルセデスAMG A 45 S ★★★★★★★★★☆

公開 : 2020.03.14 11:50  更新 : 2020.03.23 18:09

意匠と技術 ★★★★★★★★★☆

M139ことメルセデスAMGの新型4気筒は、かつての6.2L自然吸気V8であるM156ほど神格化されたステータスを得られるとは思えない。それでも、エンジニアリング的には特筆すべきものだ。

英国未導入のベーシックなA 45では、2.0L直4ターボで387psと48.9kg-mを発生する。これが、今回テストするA 45 Sでは422psと51.0kg-mまで高められている。はっきりいってありえない数字だ。

M139ことメルセデスAMGの新型4気筒は、エンジニアリング的には特筆すべきものだ。
M139ことメルセデスAMGの新型4気筒は、エンジニアリング的には特筆すべきものだ。    Daimler AG.

リッターあたりの出力は211psに達する。フェラーリ488ピスタの3.9L V8でさえ185psなのだから、これがいかに並外れた数字かおわかりだろう。もちろんこれは、量産4気筒ターボとしては世界最強だ。

この小排気量エンジンから、ずば抜けた出力を引き出す手法は信じがたいほど複雑だ。レイアウトはフロント横置きだが、前後方向は逆転。新開発のターボチャージャーや排気マニフォールドは後方、吸気システムは前方に配置され、エアフローを改善している。

ターボチャージャーはGT 4ドアクーペのそれと同じくローラーベアリングを備え、レスポンスを向上。また、電子制御ウェイストゲートがそれをさらにシャープなものとしている。

冷却系も劇的に改修。シリンダーライニングはメルセデスAMGのF1ユニットにも採用されている、ナノスライドと銘打たれた低フリクション素材でコーティングしている。

燃料供給装置は2ステージ式インジェクションで、エンジンのフレキシビリティを高めつつ、エミッションや燃費の低減にも効果を発揮する。

加えて、念の入った調整により最大トルクを5000~5250rpmで発生。そのトルクカーブは、より自然吸気ユニットに近いものとされた。

エンジンのアウトプットは、8速DCTとAMG仕様の4マチック+こと4WDシステムを介して路面へと伝達される。最大50%の駆動力を後輪に配分するドライブトレインには、左右各輪に多板クラッチを配した新型のリアディファレンシャルを搭載。出力を余すところなく、かつ最適化して送り込む。

これによりドリフトモードの追加が可能になり、走行モードはますます多彩になった。それらは、パワートレインはもちろん、ステアリングのレスポンスや4WDシステム、スタビリティコントロールのプログラム、またオプションのアダプティブダンパーのセッティングを切り替える。

サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがマルチリンク。ボディには数多くの補強が施され、フロント周りのねじり剛性とレスポンスの向上が図られた。

フロントのトレッドは拡幅され、それに合わせてフェンダーは大きくフレア。大きなパナメリカーナグリルや大径の4本出しテールパイプ、AMGエアロダイナミックパッケージと相まって、先代モデルよりルックスのアグレッシブさがグッと増している。

こちらもグッと増しているのが重量だ。テスト車の実測値は1661kgで、先代のそれより80kgも重い。前後重量配分は61:39だった。

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