【最もワイルドなカイエン】ポルシェ・カイエン・ターボS Eハイブリッド試乗
公開 : 2020.03.14 10:20
常に伝わってくる物理的な大きさ
スポーツかスポーツプラス・モードを選ぶ必要性を感じることは殆どないが、選ぶとエアサスペンションは引き締められ、スロットルレスポンスはシャープに変化。
トルク伝達の割合が変化し、ブレーキ制御によるトルクベクタリング機能は、高いコーナリングスピードに合わせて制御。リミテッド・スリップデフが出口加速を補完する。
試乗車には4輪操舵システムも搭載されていたが、機能を実感するのが難しいほどに自然。電圧48Vのシステムで動くアクティブ・アンチロールバーも、忘れてはいけない機能。複雑なパワートレイン以上に、最高のシャシー技術が深い印象を与えてくれる。
一般道での目的地までの移動速度は、クルマのサイズを考えれば、あり得ないほど。サーキットに出れば、スポーツカーに迫る走りも味わえる。
さらに機敏な運動性能を与えるなら、ボディをすべてカーボン製にするとか、重量物を大胆に削らなければ難しいだろう。
課題は、カーボンセラミック・ディスクに10ポッド・ブレーキキャリパーの組み合わせを持ってしても、重量を完璧には抑え込めないこと。常に車重は実感させられる。
タイヤのグリップ力に優れ、ドライブトレインは知的でとてもパワフル。高速域でも正確なステアリングやスロットル反応に、ドライバーが不満を感じることはないだろう。
だが、背中に伝わるものや脳みその中では、何か過ちを犯した時に制御しきれない物理的な大きさを常に感じ取っている。攻め立てて走る快感を得るには、疲れることも事実だ。
悩ましい、見事なワイルドさ
カイエン・ターボS Eハイブリッドは気持ちが掻き立てられるから、常に天使と悪魔にささやかれることになる。レンジローバーなら、そんな気分に悩まされず、長時間過ごしていても心地良いまま。
正直、より軽量なカイエンほど、達成感は得にくい。同じ感覚を得るには、より速く攻め込む必要がある。
カイエン・ターボS EハイブリッドのEVモードで走行可能な距離は、日常的な走行ではかなり有用ではある。穏やかに走っても、実際には25kmに届かないだろうけれど。
最もワイルドなカイエンには、かなり引き締められた乗り心地が付いてくる。不必要なほどに。電動化技術を搭載したことで獲得した動力性能以上に、ハンドリング性能は失われている。力強さは見事だが、PHEVの意味を疑問に感じてしまう。
より煮詰められたプラグイン・ハイブリッドSUVは他にもある。 BMW X5 45eなら、価格は半分。EVモードで走れる距離は2倍以上長く、パフォーマンスの面で不満を感じるほどの差はない。
通常のカイエン・ターボでも549psあるから、望めば充分にスリリングな体験を味わえる。こちらの方が自然で楽しく、目的地までの移動手段としても安価。あるいは、アウディRS6アバント、という選択肢も悪くはない。
ポルシェ・カイエン・ターボS Eハイブリッドのスペック
価格:12万3349ポンド(1763万円)
全長:4918mm
全幅:1983mm
全高:1696mm
最高速度:294km/h
0-100km/h加速:3.8秒
燃費:18.5-20.8km/L
CO2排出量:85g/km
乾燥重量:2490kg
パワートレイン:V型8気筒3996ccツインターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:680ps/5750-6000rpm(システム総合)
最大トルク:91.6kg-m/2100-4500rpm(システム総合)
ギアボックス:8速オートマティック