【ふ頭に見慣れぬクルマの大群】なぜ? 中古も新車も右ハンドルも 横浜税関に聞いてみた
公開 : 2020.03.21 05:50 更新 : 2020.03.29 22:23
間もなく消滅 オーストラリア唯一のブランドも
奥のバースにはまた別の右ハンドルSUVが大量に並んでいた。
これはフロントのエンブレムに保護シートが貼られており、一見したところどこのクルマなのかわからない。
ホイールにあるエンブレムでブランドが確認できた。特徴的なライオンのマークだ。ライオンと言えばプジョーがおなじみだが、プジョーではない。
これは、オーストラリア唯一の自動車メーカーである「ホールデン」のエンブレムだ。ごく少数、ピックアップトラックなどが並行輸入で日本に入ってきた記憶があるが……なぜ、ホールデンが大黒にあるのか。
ちなみにホールデンは1913年創業で1931年からGMの傘下にある。オーストラリア唯一の自動車ブランドだが、今年2月にGMからホールデンブランドの終了が発表されたばかりだ。
調べてみたら2017年にオーストラリアでの生産を終了していた。
日産/トヨタ/フォードなどの主要メーカーがオーストラリア国内での生産から撤退した後、唯一頑張っていたホールデンだったが、工場閉鎖後は全車種を輸入に切り替えていたのである。
大黒ふ頭で見かけたSUVは「ホールデン・トラックス」で韓国GMの仁川(インチョン)工場にて生産されていることがわかった。
韓国GMの工場で生産され、オーストラリアに向かう途中のクルマが大黒ふ頭にある…という状況なのである。
なぜ大黒に? 横浜税関に聞いてみた答えは
この他、大黒ふ頭のT3-8バース地区には、日本車(右ハンドル)や韓国車(左ハンドル)の中古車もたくさんあった。
これらは日本と韓国で使用されていた中古車である模様。フロントガラスに貼られた紙を見ると、いずれも行先はウクライナやロシアとなっていた。
日本車は海外に輸出されるのだろうが、他のクルマはなぜ大黒ふ頭にあるのだろうか?
気になったので、横浜税関の大黒ふ頭出張所に聞いてみた。
「これらのクルマは『トランジット』のために、一時的に大黒ふ頭で降ろされている状態です」
「韓国からオーストラリアに向けた自動車専用船による便のタイミングによって、日本(大黒ふ頭や神戸六甲アイランドなど)を経由して、大黒ふ頭で一度車両を降ろし、別の船に積み替えてオーストラリアやロシア方面に向かうことがあります」
「日本の道路を走るわけではないので、簡単な審査のみで船から降ろし、また積み替える作業を行います」
「航路によってはフィリピンやシンガポールでトランジットを行うこともあります」
ということだった。
日本ではまず見ることができない珍しいクルマを見たい人は大黒ふ頭出入口で降りて海釣り施設を目指してみてはいかがだろうか?(大黒PAに入ると、大黒ふ頭では降りられないので要注意)
ここでは日本の中古車も大量に船積みを待っており、異国の地で第二の人生を送る日本車たちにエールを送ることもできる。