【アルピーヌA310とロッチデール、ロータス】英編集部お気に入りのFRPスポーツを選出(1)
公開 : 2020.03.28 07:20 更新 : 2020.12.08 10:55
歴史的なスポーツカーから、マニアックな名車まで様々な個性。英国編集部のスタッフが、お気に入りのグラスファイバー・ボディを持つスポーツカーを選出しました。偏見混じりの選りすぐりの10台を、4編に分けてご紹介します。
アルピーヌA310 V6
どの角度から見ても破格の美しさ
ポール・ハーディマン(Paul Hardiman)
コンコルドのように鼻先の折れたフロントノーズ。くさび形のシルエットを描くアルピーヌは、今回集まったFRPスポーツカーの中では少し場違いに見える。
前後で異なるタイヤサイズのおかげで、フロントとリアには別サイズのスペアタイヤが収まっているのが、フランス車らしい。だが、よくできたパッケージングでもある。
アルピーヌA110にかわって1971年に登場したA310。フロントノーズには、当初6灯のヘッドライトが収まっていた。UFOといえばアダムスキー型だったような時代、フォルムはとても洗練されている。
ボディは大きくなり、車重も増えたが、当初はA110と同じ4気筒エンジンを搭載。フランスのアルピーヌによって生み出されたFRPのワンピースボディは、どの角度から見ても破格の美しさだ。
ボディを真横から見ると、ストラトスのように短いホイールベースに気付くが、ラインは直線的で無駄がない。1976年になると、A310はロベール・オプロンの手によってわずかな変更を受けた。
ヘッドライトは4灯となり、ホイールアーチのリップとバンパーは拡大。フロントリアにはスポイラーも追加されている。
新開発された90度のV6 PRVエンジンは、スポーツカーらしく唸り声も強い。1981年になると、S2にアップグレード。ホイールのスタッドボルトは4本へと増えている。
1977年にギ・フレクランがフランスラリーのグループ4でチャンピオンを獲得するが、A310の売れ行きは延びなかった。1979年に自国市場で最も多く販売されたが、それでも781台。1984年には、663台しか作られていない。
デロリアンと共通するシャシーレイアウト
リアサスペンションはR5ターボに移植されるなど、一部の構成要素は活かされた。アルピーヌがルノー傘下に収まると、クルマはアルピーヌGTAとして名称が改められる。
この1982年製のA310 S2は、以前にもAUTOCARの姉妹メディア、クラシック&スポーツカーに登場してもらっている。ジョン・エヴァンスが4年前に手に入れたクルマ。
もともと状態は良かったそうだが、入手後に大金を投じてトランスミッションとブレーキをリビルド。新しいミシュランTRXタイヤを組み付けた。良好な乗り心地は、一層印象的なものになっている。
エグゾーストは別注品で、シトロエンSMを彷彿とさせる快音を鳴らす。ソレックス製の2-1という配置のキャブレターから、シャシーレイアウトで共通するデロリアンのように、ホーリー製の4バレルキャブレターへと変更。10psを追加で獲得している。
トルクは充分で、高めのギア比でも加速は容易。5000rpm以上回るが、パワー感は高まらない。何より驚いたのは、前後異径の細身のタイヤにも関わらず、シャシーが落ち着いていること。リアは225で、フロントは195なのだ。
テールヘビーのモンスターではない。アルピーヌはポルシェ911のように、肩より後ろが勝手に動くことはない。鋭いコーナリングであえてリフトを誘発しても、ラインが内側に絞られていくだけ。
ステアリングはコミュニケーション豊かではないものの、重み付けは素晴らしく、どんな操作が必要なのかドライバーに教えてくれる。ブレーキングの印象は覚えていないが、きっと良かったのだろう。
少量生産だったが、FRPボディだったからこそ作ることができた。覚えている人は多くはないかもしれないが。
アルピーヌA310 V6
最高速度:220km/h
0-96km/h加速:8.0秒
燃費:9.2km/L
乾燥重量:1040kg
パワートレイン:V型6気筒2664cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:150ps/6000rpm
最大トルク:20.7kg-m/3500rpm
ギアボックス:5速マニュアル