【アルピーヌA310とロッチデール、ロータス】英編集部お気に入りのFRPスポーツを選出(1)
公開 : 2020.03.28 07:20 更新 : 2020.12.08 10:55
ロッチデールGT
買って欲しいと訴えている
Martin Port(マーティン・ポート)
1948年にフランク・バターワースとハリー・スミスが創業した、ロッチデール社。FRP製のボディで有名になったが、その起源はアルミニウムのサプライヤーだった。
創業から6年後、オースチン・セブンのシャシーに載せるためのFRPボディ、MkIVが誕生する。1957年にはロッチデールGTが登場し、過去最高の売上を記録した。
オープンボディのSTコンセプトが2年前に発表されていたが、剛性が足りなかった。そこで屋根を追加し、強度を増したのが、このGT。
当初は、フォード・ポピュラーというクルマのシャシー利用が前提だったが、最終的にはロッチデール独自設計のシャシーが用いられている。今回登場いただいた、ピーター・キャンベルが所有する1959年から1960年にかけて作られたGTも、その1台。
フォード製シャシーを用いたGTとは異なり、このクルマにはチューブラー・シャシーが組まれ、優れた剛性も得ている。キャンベルは、このGTをオークションサイトのイーベイで手に入れた。
「ボディが、買って欲しいと訴えているようでした。修理も必要でしたが、以前に所有していたGTより、シャシーの状態は良好でした」
キャンベルのGTには、1172ccのフォードE93Aサイドバルブ・エンジンが載っている。最高出力は36ps。チューニングを加えたが、目立った効果は得られなかったという。
「フライホイールのバランスを取り、アクアプレーン製のエンジンヘッドを載せ、カムシャフトも変えてあります。ピストンとバルブも大きくしたのですが、44psにしか届きませんでした」
数字は控えめでも、パーセンテージで考えればかなりのもの。トルクは太く、フォード製の3速クロスレシオ・トランスミッションを介して進む。ここで重要なのが、FRP製ボディも含めた全体的な軽さだ。
歴史的な雰囲気と美しい曲線
実際、GTは遅くはない。変速時にダブルクラッチを決めれば、パワー不足を感じることはないだろう。ブレーキはドラム式だが、コンパクトだから制動力は充分。
タイヤは15インチのクロスプライで、軽量なバラミー製ホイールを履く。ステアリングの重み付けも、優れたスポーツカーのように素晴らしく、クルマに慣れるにつれて、コーナリング速度が上がっていく。
操縦性で唯一引っかかるのが、信じられないほどタイトなペダル回り。スリムな靴を履いていないと、クラッチとブレーキペダルを同時に踏み込んでしまう。
戦後のバックヤード的なスポーツカーは、個性が強く、何かしらの縛りを持つという美点がある。オーナーが必要に応じて変更や改造を加えることも、前提だったりする。
「わたしを喜ばせてくれるクルマです。1950年代、まだ子供だった頃の歴史的な雰囲気があり、美しい曲線にあふれています。ほかの人とは違う、ということも好きです」
弧を描くルーフラインのおかげで乗り降りしにくいが、当時物のバケットシートに座れば、車内を窮屈に感じることはない。ドライバーの後ろには、小さな子供も座れるだろう。あるいは、充分な荷室としても使える。
その奥、垂れ下がったルーフラインの先にはスペアタイヤが収まっているが、車内から取り出す仕組み。満足感の高いドライビングを楽しめるが、珍しさでも負けてはいない。
ロッチデールと聞くと、モデルライフの長かったオリンピックを思い出す人もいるはず。GTという選択も悪くない。ロータス・エリートの隣に停めると、5万ポンド(715万円)も安いという事実で、一層魅力的に見えてくる。
ロッチデールGT
最高速度:128km/h
0-96km/h加速:12.0秒
燃費:10.6km/L
乾燥重量:620kg
パワートレイン:直列4気筒1172cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:36ps/5000rpm
最大トルク:6.9kg-m/3000rpm
ギアボックス:3速マニュアル