【シボレー・コルベットC3/ジネッタG15】英編集部お気に入りのFRPスポーツを選出(2)
公開 : 2020.03.28 16:50 更新 : 2020.12.08 10:55
ジネッタG15
普通の女性なら我慢できない
Lizzie Pope(リジー・ポープ)
「普通の女性なら、こんなクルマに我慢できない」 1969年のモータースポーツ誌の試乗記には、ジネッタG15についてこう書かれていた。「エンスージァストのためのクルマ」 だと。
確かにそうかもしれない。でも、FRPボディのスポーツカーを選ぶなら、まっ先に上げるのがジネッタだ。西ヨークシャーを拠点に成長した自動車メーカーで、マイルズ・ヒューイットの手によるG15は、ジネッタ社としては初めてまとまった数が作られたモデル。
といっても、せいぜい800台程度だが、完成度は高い。今も残っているのは100台程度だろう。そのオーナーはとても幸運だ。モータースポーツを楽しむピュアリストにとって、G15はベストと呼べるクルマの1つだと思う。
初期型のMkIIIが発売されたのは、1971年1月15日。キットカーだった。快適性や実用性は期待しないで欲しい。レースに荷室は不要だ。
必要なものがあるなら、柔らかいカバンに詰めて、シートの後ろに押し込めば良い。それでも肌寒い撮影の日は、シャシー番号0154に付いているオプションのヒーターがありがたかった。
身体を丸めて車内に入れば、運転にフォーカスされたコンパクトなキャビンを見下ろせる。長距離ドライブをするなら、助手席の人とは仲良くした方が良い。ドアは大きく開くから、女性的な仕草は難しいものの、折り紙のように身体を曲げなくても降りれる。
筆者にとっての不満はシートだけ。標準のものは前後に動くが、背もたれは倒れない。運転姿勢は自分の理想とは異なる体制が強いられ、シート背後の荷物は取りにくい。だからといって、運転の楽しさを打ち消すものではない。
飾り気のないピュア・スポーツカー
むしろ、ダッシュボードに刺したイグニッションキーを回した瞬間から、楽しい。キャビンの後ろに納まるのは、わずか875ccのエンジンだが、車重はドライバー抜きで501kgしかないから必要充分。
狭い足元のペダルは、左側にオフセットしている。適度に小さく、握りやすいステアリングホイールの位置は完璧だから、十分に快適。走り初めてすぐ、G15は驚くほど小回りが効くことに気付く。唯一の実用性、ともいえる。
スタートさせると、ジネッタとして生まれ変わったヒルマン・インプの基礎骨格が、活発に走ることがわかる。エンジンは回りたがりで、荒削りなサウンドトラックが気持ちを高め、クルマの能力を引き出したいと思わせる。
軽量でダイレクト。反応にも優れ、ステアリングフィールは喜びそのもの。サスペンションは硬めの設定で、路面の剥がれた箇所が良くわかる。だが地面すれすれに座るスポーツカーだから、柔らかさを期待する方が野暮だ。
ブレーキを効かせるには、それだけの力が必要。小さなG15のグリップ力は高く、かなりのスピードでコーナーに突っ込まなければ、神経質にはならない。まさに飾り気のない、ピュアなスポーツカー。シンプルさが、ステアリングを握る誰しもを虜にする。
タンジェリン色のボディに、コスミック・アルミホイールを履いたG15には、これで必要なすべてが詰まっている。今回並んだ、どのFRPボディのクルマより、大きな笑顔になれると信じている。
ジネッタG15
最高速度:157km/h
0-96km/h加速:13.0秒
燃費:12.0km/L
乾燥重量:501kg
パワートレイン:直列4気筒875cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:50ps/5800rpm
最大トルク:6.7kg-m/4500rpm
ギアボックス:4速マニュアル