【フェラーリ308GTBとマーコス、ジェンセン】英編集部お気に入りのFRPスポーツを選出(3)
公開 : 2020.03.29 07:20 更新 : 2022.08.08 07:49
歴史的なスポーツカーから、マニアックな名車まで様々な個性。英国編集部のスタッフが、お気に入りのグラスファイバー・ボディを持つスポーツカーを選出しました。偏見混じりの選りすぐりの10台を、4編に分けてご紹介します。
フェラーリ308GTB
1000台以下のFRPボディ
Alastair Clements(アラステア・クレメンツ)
クラシック・フェラーリのボディを作る光景を想像すれば、ハンマーを丁寧に打つイタリア職人の姿が浮かぶ。木製の台の上で、アルミニウムパネルを打ち出していく様子だ。
そこには、成形型の上に敷かれたグラスファイバー・マットに、樹脂を塗り込む作業はない。だからこそ、FRPボディのフェラーリ308が魅力的に感じてしまう。
誕生当初は、プラスティック製フェラーリとからかわれたこともあったが、今では特に価値あるモデルだと思う。何しろ、1975年のパリ・サロンでの発表から1977年にスチール製へと変更されるまで、作られたFRPボディは1000台以下と少ない。
レーシーな軽量版308を期待するかもしれないが、実際はスチールボディ版より113kg程度の差しかない。そのかわり、ピニンファリーナが生み出した、最も純粋でゴージャスなスタイリングをまとっている。
物議を呼んだベルトーネ・デザインのフェラーリ(ディーノ)308GT4を挟み、V6エンジンのディーノ246のクラシックな曲線美が生むインスピレーションを、瑞々しく反映している。
今回の308GTBは1976年製。オプションの16インチホイールと、アンサ製のクワッド・エグゾーストが華を添えている。
オーストラリア仕様の右ハンドル車で、2926ccのクワッドカムV8エンジンは、欧州仕様と異なりウェットサンプ。リア・ナンバープレートの周囲パネルがフラットなことが、FRP製だと見分けるポイント。スチール製ボディの場合、窪みが付いている。
バックライトがテールライト内ではなく、バンパーに付くことも特徴。エンジンカバーを開けば、FRPらしい織り目が表れ、チューブラー・シャシーにビスでボディが取り付けられているのがわかる。
ディーノの後継モデルと呼べる
5年前にフェラーリ・ディーラー、QVロンドンが英国へ輸入し、徹底的なレストアを行った。「フェラーリ以外のFRPモデルと同様に、正しく仕上げることが最大のチャレンジでした」 とQVロンドンのマイク・レスターが話す。
「ボディは肉厚で高品質。ひび割れの心配もありません。初期モデルのスペアパーツが見つからず、最終的に部品取り車としてもう1台購入するほどでした」
ボディを閉めた時の音はFRPらしく単調だが、308GTBの車内はディノの後継モデルとしての雰囲気が強い。その後にフェラーリに訪れた、デジタル革命ともかけ離れている。
コンパクトな計器パネルには280km/hまでのスピードメーターと、1万rpmまで切られたレブカウンター。イエローは7000rpmで、レッドは8000rpmに設定されている。
慣らし前でエンジンを保護する必要があったが、オリジナル状態ならV8エンジンはとても柔軟。低回転域ではクワッド・ウェーバーの吸気音を響かせるが、少しぎこちない。回転数が上がるとスムーズになる。
過去の経験では5000rpmを超えると、4カムと8シリンダーが協奏し、素晴らしい咆哮を響かせるはず。トランスミッションの変速フィールは引っかかりが小さい。
発進時は感触に乏しいラック・アンド・ピニオンのステアリングは、速度上昇とともに息を吹き返してくる。カーブに素早く飛び込めば、路面の細かな状態を手のひらに伝えてくれる。
しなやかなダブルウイッシュボーンと、素晴らしいバランス。ショートサーキットは、308GTBには朝飯前だ。
マラネロのバーゲン・モデル、308GTBは、ディーノの後継モデルとして認識されるようになった。ニッチなスポーツメーカーから、現代のメガブランドへ進化する過程で生まれた、稀有なフェラーリだといえる。
フェラーリ308GTB
最高速度:247km/h
0-96km/h加速:6.5秒
燃費:6.8km/L
乾燥重量:1100kg
パワートレイン:V型8気筒2926cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:258ps/7700rpm
最大トルク:38.9kg-m/5000rpm
ギアボックス:5速マニュアル