【フェラーリ308GTBとマーコス、ジェンセン】英編集部お気に入りのFRPスポーツを選出(3)

公開 : 2020.03.29 07:20  更新 : 2022.08.08 07:49

ジェンセン541R

4.0L直6エンジンに空力に優れたボディ

Martin Buckley(マーティン・バックリー)

大きなオースチン製エンジンを積んだジェンセンは、いつもわたしを惹き付けてきた。ベントレーRタイプ・コンチネンタルに通じるラグジュアリーさと、現代のアストン マーティンにも似たスポーティなオーラ。

ジェンセン541R
ジェンセン541R

気難しいメカニズムは搭載していない。手作りで少量生産されたジェンセン541は、両車よりも遥かに安価。オースチン製のサスペンションを活用し、丸パイプと角パイプを組み合わせた機能的なシャシーを用いることで、コストを抑えた。

少量生産に向いていただけでなく、その後のV8エンジンを搭載したジェンセンの基本構造を確立した。バランスに優れたエレガントなボディ。垢抜けたグランドツアラーが、イタリアの独壇場ではなかったことの証でもある。

アストン マーティンや2.0Lのブリストルのオーナーが小馬鹿にした、古典的なシアーライン・リムジンの4.0Lエンジンを積む。重く低回転型で、魅力的とは呼びにくいが、541に160km/hを超えるスピードを与えた。何よりも重要なポイントだ。

事実ジェンセン541は、1950年代の量産モデルの中で最速の1台だった。ドアとトランクリッドはアルミニウム製たが、それ以外のボディはグラスファイバー製。基本的にサビず、滑らかな流線型はCd値0.36と空気抵抗にも優れる。

発表は1953年。おそらく長距離の走行性能を重視したヨーロッパ車として、初めてFRP製のボディを採用したモデルだったはず。

加えて1957年のデラックスには、英国量産車としては初めて4輪にディスクブレーキを搭載。1960年のワイドボディの541Sには、シートベルトが標準装備されるなど、ジェンセンは安全性への取り組みにも積極的だった。

当時は英国最速の4シーター

このシェーン・グリフィンがオーナーの541Rは、1958年から1960年に掛けて製造されたモデル。152psのオースチン・プリンセスDS7用エンジンを搭載している。

ステアリングは正確なラック・アンド・ピニオンで、541や541デラックスよりシャシー剛性も高い。ボディは変わらず、エリック・ニールが手掛けた可愛らしいスタイリングのままだ。

ジェンセン541R
ジェンセン541R

当時のAUTOCARでは、ジャガー製のモス・トランスミッションが組まれた試乗車で、204km/hを達成。541Rは英国最速の4シーターだと記している。

そんなジェンセン541は、想像以上に希少。すべてのタイプを合わせても、生産は500台程度といわれている。1960年代から1970年代にかけて、V8エンジンのジェンセン人気に押されて影が薄くなっていたが、近年、541は初期のインターセプター並みに取引価格が上がっている。

ジェンセンの車内はセミバケットシートと、低速時も扱いやすいステアリングホイールを備え、居心地が良い。上質な仕立てのインテリアは心地よい香りが漂う。

トランスミッションはメカノイズを放ち、速度の上昇とともにゆっくりと正確な変速が求められる。滑らかな加速感は、ボンネットの内側から響く重々しいノイズ以上に、力強い。高速コーナーでは安定性が高く、タイトコーナーは想像以上に楽しい。

オーナーのグリフィンは、1959年製541Rは運転がしやすく、買い物にも使っているという。「常にエンジンオイルとラジエター液の量を保つ必要があるくらいです。面倒なことが起きても、地元のガレージが面倒を見てくれるので、助かっています」

元弁護士の彼は、トライアンフTR4Aも所有している。541Rを手に入れたのは7年前。手に入れた理由は、見た目が気に入っただけだというが、それでもジェンセンなら、充分な理由になり得る。

ジェンセン541R

最高速度:207km/h
0-96km/h加速:10.6秒
燃費:6.3km/L
乾燥重量:1480kg
パワートレイン:直列6気筒3993cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:154ps/4100rpm
最大トルク:31.3kg-m/2400rpm
ギアボックス:4速マニュアル

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