【フェラーリ308GTBとマーコス、ジェンセン】英編集部お気に入りのFRPスポーツを選出(3)

公開 : 2020.03.29 07:20  更新 : 2022.08.08 07:49

マーコス1600GT

合板製のシャシーにブレッドバン・ボディ

James Mann(ジェームズ・マン)

ジェム・マーシュとフランク・コスティンという創業者の名前を由来にするマーコス。1950年代後半の、革新的なエンジニアリング風土が生んだブランドで、マーシュのモータースポーツへの愛で育まれた。

マーコス1600GT
マーコス1600GT

シャシーは合板を用い、デ・ハビランド製の飛行機のように接着剤で結合。ジャッキー・スチュワートやデレック・ベルなど伝説のドライバーが駆り、奇妙なスタイリングのGTは当初成功を収めた。

だがジュニア・フォーミュラの登場とともに、腕の立つドライバーはGTレースから離れていった。そこでマーコスは、公道向けのスポーツカーを制作。設計は、デニスとピーターの、アダムス兄弟が担当した。

全高は1100mmにも届かず、長いボンネットに切り落とされたテール。1964年のロンドン・レーシングカー・ショーに姿を見せたマーコスGTは、遥かに安価な値段ながら、フェラーリ250GTブレッドバンのようなスタイリングをまとっていた。

当初はボルボ製の1800ccエンジンに、ド・ディオンアクスルを採用。1966年になるとマーコスGTは、ウェーバー製シングルキャブを載せた、フォード製クロスフローの1600ccエンジンへと進化する。今回のクルマもその1台。

「ツイン・ウェーバーキャブにしてみましたが、純正のエアクリーナーを付ける場所が確保できず、調子も良くありませんでした。今はシングルキャブに戻してあります」 と話すのは、所有者のリチャード・ファルコナー。

クルマを購入した15年前は、ばらばらの状態だったらしい。「その時は1500ccのクルマを組み立てていて、インテリアの部品が必要だったんです。マーコス・ヘリテージのロリー・マクマスから、倉庫に保管されている車両を紹介してもらいました」

まるでロードゴーイング・レーサー

「ボディは3分割になっていて、リビルトすることにしました。修復する中で、わたしが50年ほど前に乗っていたクルマだと気づいたんです。そこで1500ccは仕上げてから販売し、この1600GTを手元に残しました」

運転席は筆者にピッタリ。幅の広いセンターコンソール上部に、短いシフトノブが伸びている。大きく傾斜するボンネットを、湾曲したガラス越しに見下ろせる。

マーコス1600GT
マーコス1600GT

シートはフロアに固定され、ペダルの位置を前後に調整できる。ステアリングホイールの付け根のダッシュボードに、独立したノブが付いている。

1600GTを発進させれば、ロードゴーイング・レーサーのように感じる。着座位置が低く、ドライバーの横で路面が後ろに過ぎていく。

最高出力は85psでも、車重は750kgだから加速は鋭い。当時のFRP製スポーツカーとは異なり、粗野な振動やノイズとは無縁だ。

剛性に優れる合板製シャシーはコーナリング時に効果を発揮。フラットに姿勢を保ち、旧式なリジッドアクスルにも関わらず反応に優れ、攻め込んでも挙動の予想が付きやすい。

小径なステアリングホイールで操る、トライアンフ・ヘラルド譲りのステアリングラックは、間髪入れずに反応。フロントがディスク、リアがドラム式のブレーキは、必要充分といったところ。

オーナーのファルコナーは身長185cm以上だが、運転席には快適に座れる。1973年に建築家の試験に合格して以来、マーコスに乗っているという。「当初は3.0Lを買い、1800に入れ替えましたが、結婚と同時に売却しました」

「ベバスト製のルーフは、長距離ドライブでの通気性に大きな違いを生みます。窓を開くと、かなりうるさいんです」

マーコス1600GT

最高速度:175km/h
0-96km/h加速:10.0秒
燃費:7.7km/L
乾燥重量:740kg
パワートレイン:直列4気筒1599cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:85ps/5000rpm
最大トルク:14.4kg-m/3600rpm
ギアボックス:4速マニュアル

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