【TVRグリフィスとマーティン・フォード】英編集部お気に入りのFRPスポーツを選出(4)

公開 : 2020.03.29 16:50  更新 : 2021.02.17 17:44

マーティン・フォード

戦前のフォード製シャシーを流用

Simon Taylor(サイモン・テイラー)

多くの人は知らないと思うが、英国初のFRPボディを持つクルマは、ホームビルドのフォード・テン・スペシャルだった。

マーティン・フォード
マーティン・フォード

1950年代といえば、エンスージァストが自身の理想のスポーツカーを、自ら生み出す夢を見ていた時代。グラスファイバーという素材の登場で、特別な夢は現実のものとなったのだ。

シボレーコルベットの発売が始まる数ヶ月前、成長していた市場のために1953年に誕生したのが、RGSシェル社。スクラップ置き場で簡単に見つかった、戦前のオースチン・セブンやフォード・テンなどのシャシーを利用した。

完成したクルマは、合理的な技術で組み立てられ、見た目はかなり良かった。だがすべてがそうとは限らない。特にカービルダーの熱意が、実際の才能と一致しない場合は。

ジョン・プラントが所有するマーティンも、フォード・テンを土台としたクルマ。英国南東部、メードストンを拠点にするマーティン・プラスティック社によるボディは1957年製だが、クルマが組み立てられたのは1962年。

シャシーは質素なラダーフレーム。サルーンのボディを取り外して失われる剛性を確保するため、サイドメンバーはチャンネル材で補強してある。横置きリーフスプリングは、独立懸架式に改良。標準で17インチだったホイールは15インチに落とされ、ハンドリングを向上させた。

エンジンは戦前の100Eと呼ばれるユニットで、1172ccのサイドバルブ。ヘッドを削り圧縮比を高め、SUツイン・キャブレターと4分岐のエグゾースト・マニフォールドが取り付けられた。

当時100ポンド(1万4000円)程度のボディシェルは、ボルトでシャシーに固定。高めの価格設定のボディには、サブフレームが接着され、フォード製シャシーへの取り付けを容易にした。

奇抜なボディは驚くほど活発に走る

ボディ中央に峰が走り、フロントグリルの先端がつままれたように高い。同じ峰がテールエンドにも伸びる。ボディ剛性を高めるのに一役買っているはずだが、風変わりなスタイリングだ。

このマーティン・ボディを背負ったクルマはかなりの数が作られたようだが、現在は5台程度しか残っていない。ジョン・プラントは2台所有している。

マーティン・フォード
マーティン・フォード

彼は、5年ほど前にボロボロの状態で購入した。今はスマートなグリーンの塗装に、すっきりとしたインテリアトリムをまとい、とても綺麗に仕上がっている。

ボディは厚みのあるフォード製シャシーの上に載り、ドライバーはクルマの中に乗るというより、上に乗るように感じるほど着座位置が高い。フロントには小さなフロントガラスが2枚あるだけ。雨風を防ぐ装備は一切なし。

ダッシュボードにはフォード本来のメーターに、油温と水温計が追加され、シートはトライアンフTR2のもの。小さなステアリングホイールはトラクターのものだ。

何より驚くのが、とても活発に走ること。軽量なボディに、アフターマーケット製のクロースレシオ・トランスミッションが組み合わされ、はつらつと発進する。さほど速度は伸びないが。

フォード・テンのブレーキは良く効き、シャープなコーナーでも操縦性は良好。攻め込みすぎると、ロール・オーバーステアが顔を出す。

1950年代、手頃で鈍くて遅いクルマに250ポンド(3万5000円)を追加すれば、スポーティな見た目の運転が楽しいクルマが手に入った。60年以上たった今でも、奇抜なクルマの魅力は色あせていない。

グラスファイバー製ボディのスポーツカーの1台として、ぜひ加えたい。愛好者たちが大切に守ってくれていることが、素晴らしい。

マーティン・フォード

最高速度:122km/h
0-96km/h加速:21秒
燃費:11.3km/L
乾燥重量:558kg
パワートレイン:直列4気筒1172cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:36ps/5000rpm
最大トルク:6.3kg-m/3000rpm
ギアボックス:3速マニュアル

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