【歴史あるジャガーのFRという訴求力】ジャガーFタイプ R P575へ試乗 小変更
公開 : 2020.03.20 10:20 更新 : 2024.04.24 11:56
ちょいワルで騒々しい2シーター
車内は本当の2シーターでコンパクト。長距離を走るグランドツアラーとしてだけでなく、日常的な利用にも不便はない。身長が190cm近い筆者だと、さすがに完璧に快適な空間は得にくい。仮に数cm車内を広げられたとしても、大差はないだろう。
試乗車にはヘッドレスト一体のバケットシートが取り付けられていた。クッションは肉厚で、部分的に調整も可能だから、長距離であっても座り心地は快適。荷室容量はクーペサイズ。細身のリアハッチを開いて荷物の出し入れをする。
アストン マーティンを習ってか、Fタイプ Rにもクワイエット・スタートに準じるモードが追加された。だが、スタートボタンを押す前にダイナミック・モードを選んでおけば、JLR製の5.0LスーパーチャージドV8に期待する、雷鳴で起動することも可能。
上手に利用すれば、隣人との関係性を悪くすることなく、個人的な喜びも得られる。Fタイプのオーナーの場合、隣人の目を気にしない人もいるかもしれないけれど。
少し上品さを増したと感じるものの、Fタイプは生意気で好戦的な見た目のままだ。現代のTVRとでもいいたくなる。ちょいワルで騒々しい力強さに魅力を感じるか、存在感に戸惑い控えめなものを選びたくなるか、主観はそれぞれだろう。
姿は大きく見え、運転には相当な手応えがありそうに感じる。ボンネットは長く、胴回りも細くはない。1743kgもある車重を、操縦性や乗り心地から感じ取れるが、加速は充分に鋭い。
ワイルドな性格に変わりはなし
硬めの乗り心地だが、アダプティブ・ダンパーを引き締めると、明確に落ち着きがなくなる。ステアリングは重さも充分でレシオも丁度いい。だが感触には乏しい。
ドライビングモードがノーマルの時は、コーナリングの姿勢制御に寛大さが残る。ダイナミック・モードではステアリングの重みが増し、外側のタイヤへ荷重をかけながら、フラットな姿勢で旋回する。コーナー途中の隆起部分では小さく跳ねることもある。
Fタイプ Rは、明らかにシャシーの備える余裕より、動力性能の方が高い。ブルテリア犬のように、俊敏ではあるが、闘争心も強い。速くエキサイティングで、滑らかな郊外の道をスピードを上げて走れば、夢中になれる。
しかし路面次第では、正確な運転も求められる。軽くはない車重を抑え込むため、細かな修正も必要だ。
4輪駆動であっても、パワーは豊かで活発。電子デバイスがオンの状態でも、深くアクセルを踏めばリアタイヤはむずがる。手に負えなくなる前に、何らかの制御が介入してくるが。
Fタイプ Rはモデル後期になっても、ワイルドな性格を変えなかった。0-100km/h加速は3.7秒だが、おそらく簡単に再現できるだろう。
V8エンジンの怒号がスーパーチャージャーの悲鳴に重なり、音響の誘惑も積極的。3500rpmから5000rpmにかけての中間加速は、特に鋭い。
トルクコンバーターの8速ATはツインクラッチほど変速は素早くないし、現代のV8ターボエンジンほど、低回転域のトルクが太くもない。Fタイプのパワートレインに、反応の鈍さを時折感じることも確かだ。