ロードテスト アウディRS6アバント ★★★★★★★★☆☆

公開 : 2020.03.21 11:50  更新 : 2020.04.03 08:36

走り ★★★★★★★★★☆

まず、ネガティブな話からはじめたい。このとてつもなくパワフルな4.0LツインターボV8のガッカリな点を挙げるとすれば、サウンドに関するものだ。

ちょっと聞く限り、朗々と響くそれは、野太く唸るアグレッシブさが非常に魅力的に思える。ところが、もっと表現力豊かなメルセデスAMGのE 63や、それにはやや劣るがBMWのM5のV8と比べてしまうと、ちょっとばかり自制してしまっているように感じてしまう。

完璧なまでにクリーンな発進をするには、タイヤを温めるために準備走行が必要だが、それさえ済めば信じがたいほどの獰猛さでスタートラインを飛び出す。
完璧なまでにクリーンな発進をするには、タイヤを温めるために準備走行が必要だが、それさえ済めば信じがたいほどの獰猛さでスタートラインを飛び出す。    LUC LACEY

オプションのRSスポーツエグゾーストを装備しても、キャビンで耳に届く音は、ほかの部屋から漏れ聞こえてくる音楽のよう。この手のクルマなら、もっと近くで、細かいところまで聞き込みたいのだが。

もうひとつ、気になるポイントを挙げるとしたら、それは燃費だろう。テスト時の平均は6.9km/Lに止まり、動力性能テストの際には3.5km/Lという惨憺たる数字を見る羽目になった。

このエンジンが600ps級の出力を誇り、車両重量が実測2.2tを超えることを考えれば、それも驚くには値しない。とはいえ、日常の足に使うとするならば、少なからぬマイナス材料だ。また、マイルドハイブリッドなどの燃費向上策も、たいして奏功していないといえる。

それでも、サマータイヤとドライなサーキットの組み合わせもあって、このアウディは燃費の悪さを忘れさせるほど、貪欲に速さを求める。完璧なまでにクリーンな発進をするには、タイヤを温めるために準備走行が必要だが、それさえ済めば信じがたいほどの獰猛さでスタートラインを飛び出す。

まずはリアに移動した荷重がフロントへ遷移するにつれ、前輪は束の間、足掛かりを得ようと路面を引っ掻く。だが、そこを過ぎてしまえば、このサイズのクルマとしては驚くべき勢いでペースを上げていく。

過剰かと問われるならばそうかもしれない。必要ないという意見にも異議はない。しかしそれ以上に、この上なくみごとだといえる。

テスト車は、0-97km/hを3.3秒で駆け抜ける。いっぽう、0-161km/hは7.8秒だった。RS6より軽量なM5と比較すると、97km/hまでは肩を並べるが、161km/hに達するのはBMWのほうが0.3秒先だ。

ギアを固定しての加速性能をみると、4速での48−113km/hは4.6秒とみごとなスコア。それでも、M5の4秒フラットには及ばない。そうはいうものの、RS6がパワー不足だと主張しても、なかなか賛同は得られないだろう。

8速のギアボックスは、よくしつけられている。発進時にややシフトが忙しないところもあるが、走り出してしまえば素早くスムースに変速する。

カーボンセラミックブレーキは、低速では食いつきがちなところもあるが、必要としたときにみせる制動力の強さは疑問の余地なし。それは、ブレーキテストの結果が明らかに示している。

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