【冬がおススメ?】ボクスターで行くノースコースト500 素晴らしき冒険行 前編

公開 : 2020.03.28 20:50

天候は急激に悪化

寒々としたスカベン湖の畔でボクスターを停車させると改めて風の強さを思い知らされた。

カメラ機材を持って見晴らしの良い地点まで行こうとするレーシーは真っ直ぐ立つのにも苦労しているほどだ。

旅行客が冬場を避けるのにはそれなりの理由がある。
旅行客が冬場を避けるのにはそれなりの理由がある。

撮影のため前進と後退を繰り返すと、時速80km/hの追い風を受けつつ、同じ速度で走行するボクスターのルーフを閉じたキャビンは完ぺきな静けさを保っている。

まさに台風の目のいるようなものだが、逆であれば時速160km/hの逆風にさらされていることになるのだ。

最近ポルシェが4.0Lエンジンを搭載した718 GTSの登場を発表したことによって、改めてこのフラット4が失敗作だったこと明白になったかも知れないが、それでもこのエンジンには依然として多くのファンがいる。

まさにターボらしいそのパワーデリバリーによって、実際よりも活発で速いエンジンであるかのように感じられるのだ。

さらに、中回転域でも余裕を感じさせるこのエンジンはNC500のようなルートにはピッタリであり、6速で巡航していてもドライバーの求めに応じて見事なレスポンスを返してくる。

ストラスカーロンを過ぎて所々に待避所を備えた狭い1車線道路となっても、まだそれなりのペースを維持することは可能だったが、そんな状態も長くは続かなかった。

天候は急激に悪化し、ワイパーを最高速で動かしても視界がかすむ程の激しい雨とともに、午前11時前だと言うのに空はすでに夕方のような暗さだ。

「冬季通行不可」

トーナプレスからはA896号線を離れ、幹線道路というよりもまるで高速道路のような道を進むと、「冬季通行不可」と書かれた標識の前を通過している。

その標識の意味を思い知らせるかのように対向車線から除雪車が姿を現したが、運転手はわれわれの乗る明るいイエローのボクスターの登場に驚いたようだった。

除雪車がこの先の状況を暗示する。
除雪車がこの先の状況を暗示する。

ここは「牛の通り道」と呼ばれる、アップルクロス半島の山々を横断して海岸線へと抜けるルートであり、19世紀に開通した英国でもっとも急峻な道路として、623mの最高到達点まで峠道らしいヘアピンカーブが続いている。

普段であればカメラマンが何日でも過ごしたいと思う様な場所だが、ボクスターが高度を上げるにつれ、まるでわれわれを迎え撃つかのように激しい雨雲が覆いかぶさり、粘り気を感じさせる灰色の雲の中の視界は100mにも満たない。

頂上へと辿り着く頃には両側を高い雪の壁に囲まれ、冬用のコンチネンタル・ウインター・コンタクトでさえグリップを確保するのに苦労する状態で、スタビリティー・コントロールの作動を示す警告灯が頻繁に点灯を繰り返している。

長い下り坂では特に注意しながら慎重にボクスターを前へと進めたが、日没まであと4時間半しかないことに気付いたわれわれには、アップルクロスでのランチを諦めるしかなかった。

それでも、今日ここにいるもっとも勇気ある存在はわれわれのボクスターではなかった。

ドライバーが誰かは分からなかったが、ホテルの外で延長コードを繋いで充電を行っていたテスラモデル3のオーナーには最大限の敬意を払いたい。

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