【悲しくて見ていられない?】クルマの最後に密着 余生はリサイクルパーツに
公開 : 2020.06.14 06:20
ASMオートリサイクリング
こうした点を除けばこのクルマに不満などなく、個人リース契約の保証金程度の値段で手に入れることができ、少なくとも故障するまではオンボロ中古車を所有する醍醐味を味わわせてくれるこのザフィーラを、思わず手元に置きたいとさえ思った。
写真撮影を終えると、ザフィーラをラストドライブへと連れ出すべく墓地を出て、このクルマにとって最後の目的地となるテーム近郊のASMオートリサイクリングへと向かっている。
ASM社は英国でもっとも先進的でもっとも多くの車両リサイクルを行っている企業であり、毎週登録を抹消された数百台もの車両を部品取り車としてオークションに出したり、解体して取り外したパーツを検査し、修理工場や個人向けにユーズドパーツとして販売したりしている。
到着して直ぐに向かったのはASMの準備センターだったが、ここでは車両に私物やその他、火災の原因になるものが残っていないかをチェックしている。
ASMのスタッフはフロア一面に笑気ガスのボンベが散乱しているバンの写真を見せてくれた…
危険のない私物は持ち主が現れた場合に備えて半年間保管されることになるが、センターの壁一面はこうした荷物で埋め尽くされており、そのなかにはチャイルドシートやバギーなどが含まれていた。
ザフィーラに残されていた私物はルームミラーに飾られていたイチゴの飾りだけだったので、スタッフによって次のステージへと送り出されるが、それはエンジンの動力によってではない。
ゾッとする光景
ザフィーラの真横からフォークリフトの爪が差し込まれると、「外側から掴まれた時にもガラスが飛び散らないように」最後のウインドウ開動作を行うべくスタッフが待ち受けるホールへと運搬され、そこでフューエルキャップとホイール、そしてバッテリーが取り外される。
スタッフの後ろにはホイールナットとオルタネーター、エアコン・コンプレッサー、スペアタイヤ、さらにはブースターケーブルといった、スクラップ車両から回収されたパーツで一杯になった容器が置かれていた。
いよいよザフィーラは最後の時を迎えるべく、巨大なポンプによってすべての油脂類が抜かれることになる。
燃料タンクを空にすべく、巨大なホロードリルのような道具を持ったスタッフがボディサイドに穴を開け、ホースを差し込んで燃料を吸い出している。
そして最後にブレーキディスクが取り外されると、ザフィーラはクラッシャーへと向かうことになるのだ。
建物の外ではベテランオペレーターが操作する2基の機械の爪が、まるでこども達に飽きられたミニカーのようにスクラップ車両を軽々と扱っている。
われわれのザフィーラが同じように扱われる様子はまさにゾッとする光景だった。
最初に爪がサッと降りて来たかと思うと、ザフィーラを掴んで上空へと持ち上げ、落下させるとそのまま転がしている。