【悲しくて見ていられない?】クルマの最後に密着 余生はリサイクルパーツに
公開 : 2020.06.14 06:20
最後は苦しまずに
もはやザフィーラはほとんどその原型を留めておらず、次の瞬間、爪の先端が屋根を突き破ったかと思うと、ワイヤーハーネスもろともダッシュボードを引き抜いている。
さらに、ザフィーラをひっくり返してリアアクスルを引きちぎると、ふたたび車両をもとに戻し、今度はエンジンに狙いを定めたようだ。
爪に備わるハサミで器用にエンジンマウントとホース類を切断すると、エンジンを取りだして片隅にそのまま積み重ねている。
今度はもう1基の爪がAピラーを掴んで持ち上げると、スタビライザーが取り外され、もとはザフィーラだったボロボロの車両はクラッシャーへ向けて転がされている。
クラッシャーの巨大なドアが閉まって30秒、ふたたび扉が開くと、もとはMPVだった圧縮された鉄の塊が機械の爪によって取り出された。
この日1日で、125台もの車両がこの無慈悲な機械の爪によってはぎ取られ、引きちぎられ、そして押し潰されたのだ。
そして、かつては家族の忠実なファミリーカーだったわれわれのザフィーラは、1.8m x 0.9mの鉄の塊へと姿を変えている。
それでも、少なくともザフィーラは苦しまずに最後を迎えることが出来た。
なかには消防隊の訓練に使われる車両もあるのだ。
そんなことは考えるだけでも恐ろしい。
番外編:リサイクルパーツのすゝめ
まさにその名が示すとおり、ASMオートリサイクリングでは単に車両をスクラップにするだけでなく、リサイクルも行っている。
他のリサイクル業者とともに、ASMでは車両の修理に際して、新品部品よりもスクラップ車両から回収(さらには検査と保証も行っている)したパーツを活用するよう、保険会社や修理工場に働きかけている。
そうすることで、英国はいまやリサイクルパーツの活用が義務付けられているフランスや、すでに数十年もこうしたリサイクルパーツの利用が広がり続けている米国と肩を並べられるようになるだろう。
リサイクルパーツの利用が10%増えれば、自動車部品産業から排出されるCO2の量を毎年19万トン削減することが可能であり、保険会社がこうしたリサイクルパーツの利用を認めるようになれば、廃車になることを避けるだけでなく、保険料や免責金額を下げることさえ可能になるかも知れない。
一般のドライバーにこうしたリサイクルパーツの利用を促すべく、業界団体ではリサイクル業者に対する認証制度を設けることで、パーツの品質と状態表示などに対する一貫した信頼性を担保するとともに、安心してこうしたパーツを購入することの出来る専門業者の情報を提供しようとしている。