【唯一のオープン・クロスオーバー】VW Tロック・カブリオレ1.5 TSIへ試乗
公開 : 2020.03.25 10:20
Tロックに新しく追加となる、カブリオレ。フォルクスワーゲンのモデルで唯一のコンバーチブルとなるだけでなく、市場で選べる唯一のソフトトップ・クロスオーバーでもあります。英国編集部がドイツで評価しました。
ゴルフ・カブリオレを間接的に置き換え
いま最も人気の高いクロスオーバーの1台が、フォルクスワーゲンTロック。普通に考えて、車重を増やし、ボディ剛性を下げ、汎用性を低めるというアイデアは、賢いものには思えない。
ところが、フォルクスワーゲンはそれを実行した。ゴルフ・カブリオレを間接的に置き換えることになる、Tロック・カブリオレ。フォルクスワーゲンのニュー・ビートルは生産終了となったから、フォルクスワーゲンとしては唯一のカブリオレでもある。
ソフトトップを組み立てるのは、伝統のカルマン社。ルーフを閉じれば、スタイリングのバランスはハードトップと同様に優れる。固定ルーフのフォルムを再現するように設計された、複層構造のファブリックを持つ。
ルーフを切り取り、ソフトトップを付けるため、プラットフォームには大きな変更を加えている。ホイールベースは37mmも延長。全長も34mm伸びている。
フロアパンやサイドシル、ドア、フロントガラス周辺は、ボディ剛性を確保するために強化。固定ルーフのTロックは4枚ドアだが、フレームレスの2枚ドアへと変更されている。Bピラーもなくなった。
プラットフォームの変更によって、車重は194kgも増えている。その重さは、走り出すと隠しきれない。
ターボ過給される1.5L 4気筒ターボ・ガソリンエンジンは、150psと25.3kg-mを発生。粘りがあり回転上昇も滑らかだが、走り出すと懸命に頑張らなければならない。シフトチェンジも頻繁に必要となる。
12秒で得られる開放的なドライビング体験
減衰力が高められているが、Tロック・カブリオレは攻め立てた走りを好まない。荒れた路面では特に、ボディへ伝わる振動やしなり感が顕著。結果的に運動性能に制限がかかってしまう。乗り心地は落ち着きがなく、コーナリング中には振動が感取される。
だが、屋根がなくなりプラットフォーム付近に重量物が追加された影響で、重心高は低下。ボディロールは良く制御されている印象だった。
スピードを落として屋根を開けば、カギとなる開放的な体験も楽しめる。穏やかに走らせていても、振動が完全に消えることはないけれど。
ソフトトップをリアシートの後ろへ折り畳むのに必要な時間は、わずか12秒。ボタンを押すだけで、素早く、外の空間と一体になれる。サイドウインドウを上げれば、130km/hくらいまでなら風の巻き込みやバッファ音も小さい。険しい道でなければ、快適に運転できる。
ただし、スポーティというわけではない。着座位置は典型的なSUV。屋根がない、というだけだ。
試乗車には7速デュアルクラッチATが載っていたが、6速マニュアルの方が軽快でドライバーの意図通りに走れるだろう。
インテリアは、前席周りは通常のTロックと同じ。硬質なプラスティック製のダッシュボードが広がり、フォルクスワーゲンらしく精度のいい操作系と、質実的なインテリア素材が組み合わされている。