【ホンダ軽トラック】次世代、「Nトラック」としての復活可能性は低く Nバンとは別の方向性

公開 : 2020.03.25 18:20  更新 : 2021.10.09 23:54

Nバンとは別の方向性 Nトラックあり得ず

もう1つ、アクティ・トラック生産中止の理由は、Nバンの存在だ。

ホンダの軽自動車戦略の中心はNシリーズだ。NボックスNワゴンNワン、そしてNバンという現在は4モデル化している。

ホンダNバン
ホンダNバン

2011年12月発売から2019年11月までNシリーズ累積販売台数は250万台を突破。主軸であるNボックスは2019年単年で25万3000台と売り上げ、登録車を含む全モデルで第1位となった。

2018年7月、Nシリーズに新たに加わったNバンの報道陣向け試乗会で、ホンダ関係者とホンダの商用車の在り方について意見交換した。

ホンダ側が強調したのは「Nバン=商用車」という位置付けではない、という点だ。Nバンは、あくまでも人々の多様な生活に対応するためのアイテムとして、商用車の常識を変えるために商品企画された。

低床でフルフラットになるシートアレンジは、軽トラックの要素をも組み込んでいる。そのため、Nバンをベースとした、Nトラックという発想には結びつかない。

つまり、アクティ・トラックの次期モデルとして、Nトラックが登場する可能性は極めて低いと考えるべきだと思う。

ただ、アクティ・トラックがまったく別の領域で復活する可能性も否定できない。

その背景にあるのが、2020年4月1日付での大規模なホンダ組織改編と、改編後も研究所内に残るライフクリエーションセンターの存在である。

「技術は人のために」 次世代モデルに期待

本田技研工業(以下、本社)と本田技術研究所(以下、研究所)が事実上、合併する。ホンダ史上、最大級の組織改編である。

1960年に開業した研究所は、ホンダの基礎研究、デザイン、量産開発を本社から発注されるかたちで、独立企業として運営されてきた。

生活密着型モビリティの次世代モデルはライフクリエーションセンターから発案される。
生活密着型モビリティの次世代モデルはライフクリエーションセンターから発案される。

世界的にみて、こうした体制を敷く自動車メーカーは稀だ。

だが、近年は市場動向や変化が激しく、本社の主導力を強化したモノづくり体制が、ホンダとしても必然となった。2019年4月には二輪事業を本社統括とし、その流れが今回、四輪事業にも採用された。

一方、農耕器具や発電機など、パワープロダクツ領域とロボティクス領域を融合させ2019年4月に発足したライフクリエーションセンターは研究所内で存続する。

筆者は2019年11月、本社でライフクリエーションセンター幹部にインタビュー取材した。

そのなかで、除雪や農耕など、人の暮らしに必要不可避な領域に、ホンダらしい新しい技術をビジネスモデル化するとの将来展望が出た。

ハンドル型電動くるまいす「モンパル」と、アクティ・トラックの生産が中止される中、こうした生活密着型モビリティの次世代モデルはライフクリエーションセンターから発案されるのだ、と感じた。

時期は不明だが、アクティ・トラックはまったく違った姿で再登場するかもしれない。

記事に関わった人々

  • 桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?

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