【大衆より上級】フォルクスワーゲンではなく、メルセデス・ベンツが一番売れる日本市場の不思議

公開 : 2020.03.28 05:50  更新 : 2021.10.09 23:54

広尾、六本木、世田谷のセレブ効果

メルセデスのオーナーといえば、男性が中心のイメージが強かった。個人所有ではなく、企業オーナーが会社の経費でSクラスEクラスを買うというイメージもあった。

そうした状況がモデルラインナップの拡充が進んだ2000年代以降、徐々に変化が見てきたと感じる。

変化をもたらした要因は女性ユーザーの増加だ。

セレブが多い、広尾、六本木、世田谷など東京の高級住宅地で定点観測してみると、20代から40代の女性を中心に、メルセデスが乗用車としてのミニマムリクワイアメント(必要最低条件)のような雰囲気がある。

しかも、AクラスBクラスではなく、中位以上のモデルが多い。

こうした東京・都心の生活トレンドが、城南地域(横浜・川崎)、埼玉、千葉などに直接的な影響を、また大阪、名古屋、福岡などの地方大都市にSNSなどを通じて間接的な影響を及ぼす。

さらに、金沢や仙台といった古くからの富裕層が多い中規模都市にも、東京都心トレンドへの憧れから、女性のメルセデスユーザーが増えていった印象がある。

なお、メルセデス・ベンツ日本よると、どのモデルについても所有者、使用者の男女比は非公開。

そのうえで、車検証の名義が夫で、使用頻度が高いのが妻などの家族というケースは当然あるものの、実態は把握していないとのことだ。

バブル世代と団塊ジュニア 買い方も変化

男性ユーザーでは、バブル世代の50代中盤から後半、また40代後半から50代中盤の団塊ジュニア世代(団塊の世代の子供)でメルセデスの人気が高い印象がある。

バブル世代は若い頃、自身にとっての初めての輸入車としてフォルクスワーゲンを買った人も多い。それが、生活に余裕が生まれて、若い頃に高嶺の花だったメルセデスに手を伸ばしている。

SUVやクロスオーバーなどバリエーションが増えたことも、バブル世代にとってはメルセデスが愛車として現実味が増えてきた大きな要因。
SUVやクロスオーバーなどバリエーションが増えたことも、バブル世代にとってはメルセデスが愛車として現実味が増えてきた大きな要因。

SUVやクロスオーバーなどメルセデスのモデル・バリエーションが増えたことも、バブル世代にとってはメルセデスが愛車として現実味が増えてきた大きな要因だ。

また、男女や世代と問わず、買い方も賢くなっている。

メルセデス・ベンツ日本によると、コンパクトモデルでのリース利用が増えているという。また、日本では2011年にオープンしたメルセデスという商品に気軽に出会える場である、メルセデスミーの存在も大きいと分析している。

こうした各種情報と筆者自身の体験を合わせると、日本でのメルセデス人気の背景には、男性の中核ユーザー層が、団塊の世代から中年層へと上手くシフトしていること。

さらに、広い世代における女性セレブの情報発信力に支えされているからだと推測する。

日本におけるメルセデスはもはや、単なる高級ブランドではなく、ライフスタイルを充実させるためのブランドなのだと思う。

記事に関わった人々

  • 桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?

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