【早すぎた流線形のボルボとデ・ソト】斬新なエアフローとPV36カリオカ 後編

公開 : 2020.04.12 20:50  更新 : 2020.12.08 11:05

1930年代、クライスラーの販売は大胆な流線形ボディの新モデルの発表とともに低迷します。しかし、ボルボを始めとする多くの自動車メーカーへ、新しい空力デザイン・ボディを生み出すきっかけを与えました。2台を比べてみましょう。

500台の生産に留まったPV36カリオカ

text:Jon Pressnell(ジョン・プレスネル)
photo:Will Williams(ウィル・ウイリアムズ)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
ボルボPV36カリオカの製造は、1935年と1936年の2年間と考えられている。従来的な箱型ボディを持つPV658やPV659にかわる、上級至高のクルマとして登場したが、作られたのは500台だけ。1938年にコーチビルダーによって、オープンボディに改造された1台もある。

ボルボPV36カリオカのデザインも同様に、ターゲット層には少々先進的すぎた。価格もデ・ソト・エアフローより1000クローナ(1万1000円)も高く、訴求力も低かった。

ボルボPV36カリオカ(1935年)
ボルボPV36カリオカ(1935年)

販売で伸びなかったPV36カリオカ。基本的なレシピはそのままに、よりシンプルなメカニズムと、穏やかなデザインを与えたクルマが必要だと考えたボルボは、1936年12月にPV51を発表する。

エンジンは同じ3.7Lで、インテリアもシンプルになった。フロント周りはオーソドックスなデザインへと変更。全体的にはPV36カリオカのスタイリングのままだったが、ボディからは高価な装飾が省かれている。

タイヤスパッツと2分割のスプリット・リアウインドウもなくなった。ボディは手間の掛かる木材の骨組みを備えた構造ではなく、すべてスチール製となっている。

その結果、PV36カリオカの価格が8500クローナ(9万3500円)だったのに対し、PV51は5800クローナ(6万3800円)へとダウン。ボルボが、スウェーデンでの地位を築くことになる。

ボルボの基盤を確立させたモデル

こう見ていくと、PV51に生産台数では水を開けられているが、ボルボが基盤を確立することにつながったクルマとして、PV36カリオカの重要性は高い。今回は英国で唯一現存する、アンドリュー・アンダーソンのカリオカに登場願った。

デ・ソト・エアフローとボルボPV36カリオカが並ぶ光景。フロントマスクは異なるが、全体のフォルムからは同じ血縁を感じさせる。

ボルボPV36カリオカ(1935年)
ボルボPV36カリオカ(1935年)

低くフラットなルーフに、前後2分割の窓。なだらかにカーブするテールエンドと、ボディと一体になったヘッドライト。リアのタイヤスパッツには、アールデコ帳の装飾が付く。サイドウインドウの枚数は異なるが、親近性が強い。

PV36カリオカには、デ・ソト・エアフローのディティール処理は備わっていない。わずかにVの字を描くが、パンパーは一般的な造形だし、フロントグリルやマスコットもシンプルだ。

広々としたインテリアも同様。かなりシンプルで実用的。クロームメッキのパーツもほとんど目につかない。

だがボルボPV36カリオカは、大きな荷室に外側から荷物が入れられる。デ・ソトにはないヒーターが付いている。三角窓が省かれているが4枚付いたドアなど、北米市場のニーズも考えられている。

走ってみたらどうだろう。どちらも穏やかだが、エアフローは101psを発生するだけでなく、車重は1575kgと、PV36カリオカより85kgも軽量。当然のように豊かなトルクで堂々と走る。

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