【早すぎた流線形のボルボとデ・ソト】斬新なエアフローとPV36カリオカ 後編

公開 : 2020.04.12 20:50  更新 : 2020.12.08 11:05

柔らかく力強く走るエアフロー

3速マニュアルにはシンクロが付いていて、長くてゆるいシフトレバーの感触は上質。走り始めれば、スムーズな変速で自由に走り回れる。エンジンの回転数を抑えて、リラックスしたクルージングに浸れるオーバードライブに自動で入るが、ほとんど感知できない。

これこそデ・ソトの個性。紳士的でソフトなサスペンションは路面に沿って緩やかに動き、4.0Lの直6もゆったりと回る。ステアリングは低速では重いが、走行時は過度に気を使わずにライン内にクルマを留めておける。油圧ブレーキも効果的。アメリカ大陸も横断できそうだ。

ボルボPV36カリオカ(1935年)
ボルボPV36カリオカ(1935年)

「オーバードライブのおかげで、80km/hから90km/hくらいで終日走っていられます。ボディが流線形の割に、風切り音は驚くほど大きいです」 と話すのは、1935年製デ・ソト・エアフローのオーナー、アダム・ムーディ。

「低速時でも、長いスプリングが路面の凹凸を均してくれます。ステアリングのジオメトリーの設定のせいで、操舵感は重めです。1930年代のクルマにしては良く走ります。座席はしっくり来ません。ソファーに座って運転しているみたいです」

ボルボは、より落ち着いたスウェーデン流の仕草を披露する。PV36カリオカはより引き締まっており、乗り心地も硬め。操作に対するレスポンスも、比べれは速い。大排気量のサイドバルブ・エンジンは低速トルクが太く、スムーズに回る。

ステアリングのフィーリングは少し曖昧。ブレーキペダルのストロークは短いが良く効く。シフトノブを動かすと、少し粘りを感じる。

先駆者としての悩みにさらされた2台

3速のトランスミッションには、フリーホイールもなく、デ・ソトのように自動で入るオーバードライブもない。滑らかに変速するには、ニュートラルで一度、シフトレバーを止める必要がある。

それでも一度走り始めれば、リラックスして走れる大柄なクラシック。ステアリング操作にわずかな気を配れば、問題ない。

デ・ソト(クライスラー)・エアフロー/ボルボPV36カリオカ
デ・ソト(クライスラー)・エアフロー/ボルボPV36カリオカ

創業からわずかに8年。ボルボが、1934年までに生産した乗用車は述べ5000台足らず。PV36カリオカの完成度に唸らざるを得ない。「当時としては作りも良く先進的でしたが、かなり車重があります」 と話すのはボルボPV36カリオカのオーナー、アンドリュー・アンダーソン。

アメリカで見つけたクルマに手を掛け、快適に走行できるようにしてある。「第2次大戦直前のモデルや、戦後のPV60ほど良くはありませんが、スピードは充分出ます。エンジンもとてもズムーズです」

工業デザインの変化を受け、クライスラーからデ・ソトは充分な成果を得た。ボルボは、従来的なクルマから目を向けさせるため、若い会社として賢明なアプローチを、控えめな表現で達成した。どちらも、自国ではオーナーに高い満足感を与えたに違いない。

一方でオーナーになるには、新しいものへ臆せず飛びつく、アーリーアダプターとしての勇気も必要だったはず。新しさを理解できない隣人からは、冷笑されていたかもしれない。先駆者は、どの時代においても悩みが絶えないのだ。

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