アウディS6
公開 : 2012.04.20 11:08 更新 : 2017.05.29 18:18
■どんなクルマ?
ランボルギーニ・エンジンを搭載していたにも関わらず、不思議なことに前のS6はあまり印象に残らないクルマだった。5.2リッターのV10エンジンは適切なサウンドトラックになったとはいうものの、イタリアの種馬の去勢されたエンジンを積んだうるさいクルマだった気がする。
最新のS6は、それまでのノーマル・アスピレーションのエンジンから、全てを一新したツイン・ターボV8ユニットを搭載する。そして25%も良い燃費をもたらすのである。
512bhpを発揮する4.0リッター・エンジンは、最初にS8に搭載され、次にベントレー・コンティネンタルGTに搭載された。しかし、より安く小さなモデルに搭載するにあたり、アウディは電子制御トリムを見直し、約100bhp、10kg-mのパワーダウンを図った。従ってS6は薄められたパワー・ユニットを搭載することになるのだが、それは燃費においても良い結果をもたらすことになる。
車両重量は1895kgもあるが、それでもベントレーよりも400g軽い。最高速度はリミッターで250km/hに制限されているものの、0-100km/h加速はS8よりも0.4秒遅い4.6秒という数値をマークする。また、燃費は、4気筒を効果的に休止させるシリンダー・ストップ・システムや、スタート・ストップ・システム、エネルギー回生システムなどにより、10.4km/lという値を記録する。
もちろん、Sバッジならではのエクストラが加えられる。10mm低いサスペンション、7速のSトロニック・ギアボックス、可変ドライブ・セレクト・システム、そしてトルク・ベクターリングを備えたクアトロ・システムが装備されることとなる。
■どんな感じ?
期待に反していくぶんか前モデルに似たところもあるようだが、アウディのハードワークは部分的に成果をあげているようだ。
V8サウンドは、ダイナミックにその音を奏でることを断固拒否しているかのごとく非常に良く抑制されている。もちろん、完全にそのサウンドが消されているわけではないが、アウディの技術によって常識的な範囲以上にノイズを抑えているのだ。
われわれが先週テストしたツインターボ3.0リッターのTDIのように、S6はストッロル・ペダルを1/4インチほど踏んだだけでは反応しない。そういった意味では、燃費効率が良いとされるDモードでは、つま先に不快感を覚えるかもしれない。また、Sモードでも、スロットル・レスポンスは一瞬遅れるのだ。
とはいうものの、長く乗っているに連れ、アウディS6が総じて素晴らしいクルマであるということは理解できる。アウディのアクティブ・ノイズ・キャンセル・システムは静かなキャビン空間をもらたしてくれるので極めて快適だ。アウディがこのS6に持たせたかったキャラクターは、そういったものなのであろう。
クアトロ・システムによる安定性も極めて高いものだ。だだ、電動パワー・アシストのステアリングのセッティングには疑問が残った。ダルで路面のグリップ状況をあまりうまく伝えてはくれないのだ。
■「買い」か?
S6はニッチなマーケット向けのクルマだ。ただし、このS6がスポーティなクルマの象徴かといえばそうではない。そのポジショニングがどういう立ち位置にあるのかがやや不明であり、本当にスポーティなモデルとしてはRS6が存在しているのだから。
このアウディS6は素晴らしく速く、そしてまあまあ効率的であることは間違いない。しかし、その価格を正当化させることはやや難しいのではないのだろうか。
(ニック・カケット)
アウディS6
価格 | 53,995ポンド(707万円) |
最高速度 | 250km/h(リミッター) |
0-100km/h加速 | 4.6秒 |
燃費 | 10.4km/l |
Co2排出量 | 225g/km |
乾燥重量 | 1895kg |
エンジン | V8ツインターボ3993cc |
最高出力 | 414bhp/5500rpm |
最大トルク | 56.1kg-m/1400rpm-5200rpm |
ギアボックス | 7速ツイン・クラッチ・オート |