【高速域でも息切れ知らず】ポルシェ・タイカン・ターボへ試乗 EVの新基準
公開 : 2020.04.01 10:20 更新 : 2021.02.10 17:27
見事に隠された2.3tもある車重
乗り心地は、豪奢なパナメーラと意図的に引き締められた911との中間にある。アダプティブ・エアサスペンションが最も柔らかい設定になるノーマルモードでは、エグゼクティブ・サルーンとして通用するほどしなやかだ。
さすがに舗装の剥がれたような区間では、車内へ不規則に振動が伝わってくる。だがメルセデスAMG E63より、低速域での落ち着きは上だろう。タイヤは20インチのミシュラン・パイロットスポーツ4Sだが、タイヤノイズは911より遥かに抑えられている。
タイカンはスポーツカーと呼べるだろうか。確かに、これまで試乗してきたEVの中で、最も説得力のある仕上がりは得ている。
見事に隠された2.3tもある車重に気付くには、走り慣れたワインディングを10分くらいは走り込まなければならない。300kgもパナメーラより重いのに、ターンインはシャープ。姿勢制御も安定している。
試乗車にはオプションのダイナミック・シャシーコントロールが装備され、アクティブ・アンチロールバーが有効に機能していたこともあるはず。よほど極端に進行方向を変えなければ、大きな質量が横へ移動することは感じ取れない。
トルクベクタリング機能付きの4輪駆動で、一般道でトラクションを失わせることはほぼ不可能。コーナーの出口では、リアタイヤが強くクルマを押し出してくれる。ステアリングはクイックでクリア。重み付けも良く一貫性がある。
日常の足として利便性にも優れる
前方視界にも優れ、ドライビングポジションも素晴らしい。後方視界は良くないから、カメラ映像が役に立つ。4輪操舵システムを搭載し、小回りも効く方だった。
ブレーキペダルの感触も良好。だが、多くの回生ブレーキと同様に、踏み込み量と実際の制動力とが完全には一致していないようにも感じられた。
滑走時の回生ブレーキの効き方は穏やかだが、ドライビングモードによって変化する。ポルシェとしてはワンペダルではなく、ブレーキペダルとアクセルペダルとの両方を用いたドライビングを想定している。
確かにポルシェ911ほど運転が楽しいわけではない。スポーツカーとしてのベンチマークに届いているともいえない。しかし、750kgは軽量な911に近いとすら感じさせるフィーリングを獲得した事実は、シュツットガルトの技術者の優秀さを示している。
タイカンの素晴らしさは、走りだけではない。日常的な足としての利便性にもある。
引き締められた滑らかなボディシェイプだから、テスラ・モデルSほどの車内空間は得られていない。それでも190cm近いドライバーに不足ないフロントシートを備え、平均的な身長の大人なら、リアシートにも不満なく座ることができる。
インテリアも典型的なポルシェ。目立った豪華さはなくても、質感は高く操作もしやすい。大きなモニターで多くの機能を動かすことになるが、すべてのメニューが論理的に配置され、わかりやすい。モニターによるメーター類の可読性も良い。