【16年の差】レクサス、日本ではなくアメリカで生まれた背景 アメリカ人幹部がトヨタ本社を口説いた
公開 : 2020.03.31 12:55 更新 : 2021.10.09 23:54
アメリカ人幹部らがトヨタ本社を口説いた
トヨタの北米営業本部のアメリカ人幹部らは、アキュラを念頭に、「この際、トヨタとしても高級車の新ディーラー網を作るべきだ」と、トヨタ本社に提案した。
当時の協議に参加したアメリカ人関係者は「この件で何度も日本に行ったが、話はそう簡単には前に進まなかった」という苦悩した日々を振り返った。
辛抱強く交渉を続けるうちに、レクサス構想が現実となる。
「押しても押しても動かなかった大きな岩(トヨタ本社)が一度動き出すと、それからは物凄い力となって一気に話が進んでいった」という。
レクサス実施に際して、トヨタが最重要視したのが「アメリカでの、カーディーラーの常識を根底から変えること」だ。
アメリカ人にとって、日常生活のなかでできれば行きたくないところとして、歯医者とカーディーラーが引き合いに出されることは、昔から多かった。歯医者は治療で痛い思いをしそうだから。一方、カーディーラーは「胡散臭いから」と言われてきた。
実際、筆者も1980年代からこれまで、カリフォルニア州、ノースキャロライナ州、ジョージア州、テキサス州など全米各地の正規ディーラーで、新車購入、新車リース、中古車購入などを体験してきたが、「胡散臭さ」という表現は理解できる。
できれば行きたくない→いつも行きたい所に
アメリカのカーディーラーは、いわゆるフランチャイズ形式がほとんどだ。
日本のようにユーザーとの売買契約を受けてからメーカーに発注するケースもあるが、メーカーから買い取ったクルマを店頭に並べるという方式が多い。
オプションなどを組み込んである状態の実車販売となる。
そのため、在庫処分での叩き売りで、ディーラーマンの言うこともコロコロ変わるなど、値引きの幅はディーラーによって大きく違う場合がある。
ブランドによって差はあるにしろ、アメリカでは長年、潜在的にユーザーのカーディーラーへの不信感があった。
そうした「皆が、できれば行きたくないところ」という負の部分を逆手にとって、「いつも行きたいところ」を創出することが、レクサスの方向性となった。
レクサス効果が、アメリカのトヨタディーラーにも良き影響を及ぼすことを狙った。
つまり、レクサスはたんなる高級ブランドではなく、顧客体験を最重要視することが使命として始まった。
日本上陸がレクサス生誕から16年も遅れたのは、日本市場での顧客体験について、明確な方向性を描くことが難しかったからだと思う。
日本導入直後は、日本市場での対応に苦労したレクサスだが、いまやグローバルブランドとして日本人にも素直に受け入れられる顧客体験を提供できるようになった。