【ドリフトの極意を伝授】忍耐と練習あるのみ 究極のドリフトとは芸術?
公開 : 2020.04.12 16:50
忍耐が必要
簡単そうに聞こえるに違いない。
だが、現実は厳しく、頭で理解するのと実際にやるのとでは大違いだ。
当然かも知れないが、ほとんどスピードを出していないというのに、最初数回のトライではMX-5をあっと言う間にスピンさせただけだった。
それでも、思い切って37km/hまでスピードを上げ、コーナーの手前数mでアクセルを戻すと、リアから荷重が抜けるのが分かり、そのままステアリングを切り込んでいくと、クルマ全体がユックリとスライドし始めるのを感じることが出来た。
さらにドリフト状態へと移行すべくアクセル操作を行うが、スロットル開度が大き過ぎたり小さ過ぎたりして、MX-5はふたたびグリップを取り戻すか、グリップを失いスリップしてしまう。
なかなか上手く行かない。
MX-5のショートホイールベースが非常に軽快な印象を感じさせる一方、ビギナーながらもなんとかドリフトをものにしたいという強い思いが、余計に事態を悪化させているようだ。
それでも、ビルは驚くべき忍耐強さを見せてくれた。
彼は穏やかにクルマを自らの思い通りに操ることの重要性を思い出させるとともに、自らの失敗に対する忍耐が必要だと強調する。
ドリフト向きのクルマ
確かに、各操作の間に一瞬間を置いてみると、クルマの挙動がより感じられるようになるとともに、車両バランスが移動する様子に注意を向けることが出来る。
さらに辛抱強く練習を続けた結果、アプローチは何とか上手く行くようになり、次のステップへと進む準備が整ったようだ。
ここで重要となるのが1回目と2回目のアクセルオンのタイミングであり、何度か失敗を繰り返したものの、一旦コツを掴むとコーナー出口までドリフト状態を維持することが出来るようになっている。
ステアリングとアクセル操作のバランスはまだ完ぺきではないが、ドリフト状態への移行よりも、その維持の方がより感覚的な操作が求められる。
頭を整理すべく短い休憩をとった後、ようやく350Zに乗り換えてツインドリフトに挑戦することになった。
乗り込んでみると、Zの方がよりドリフト向きのクルマだと思える。
MX-5に比べロングホイールベースを持つこのクルマであれば、ドリフトへの移行が予測しやすいだけでなく滑らかに進むように感じられ、すべてがより自然なフィーリングだ。
まさにアーティスト
ようやくツインドリフトに挑戦することになったが、まさに、ここからがアートとしてのドリフトであり、体に染み付いたサーキット走行のセオリーを無視する必要がある。
思い切ったライン取りをすればするほど、次のドリフトに向けたアプローチが簡単になるのだ。
そして、ここでもタイミングと忍耐が重要だ。
ひとつのコーナーが終わっても出来るだけアクセルオンの状態を維持し、その後アクセルを戻して荷重移動を行うと、車体がまるで振り子のように姿勢を変えドリフトから次のドリフトへと移行する。
レッスンが終わる頃にはほぼすべてのコーナーでドリフト出来るようになったが、「ほぼ」でありすべてではない。
レッスンを始めた頃を考えれば、わずか数時間でここまで到達したことは驚きであり、まさにビルのインストラクターとしての能力と、そのまるで聖人のような忍耐強さの証明でもある。
それでも、プロドライバーのような途切れることの無いドリフトが出来るようになるには、徹底した練習を4年ほど続ける必要があると言う。
だが、そこまで辿り着けば、自らの限界は自分自身の想像力だけになる。
限界と常識にチャレンジする想像力豊かなドライバーだけが、もっとも驚異的なドリフトを実現することが出来るのであり、そんな彼らはまさにアーティストと呼ぶべき存在だ。