ロードテスト ポルシェ718スパイダー ★★★★★★★★★☆
公開 : 2020.04.11 11:50
意匠と技術 ★★★★★★★★★★
このクルマの心臓部は水平対向6気筒で、最高出力は420ps、最大トルクは42.9kg-mを発生する。排気量は4.0Lだが、9000rpmまで回るレースユニットのような911GT3の9A1系をデチューンしたものではない。
先代のボクスター・スパイダーは、当時の911カレラS用3.8Lフラット6を搭載。大幅な改修は行われず、最高出力は375psだった。
今回は9A2エヴォこと992カレラSの3.0Lツインターボをベースとする、新開発のエンジンだ。ボアとストロークを拡大し、ターボを排除。シリンダーヘッドやバルブ、ピストンとコンロッドを刷新した。クランクシャフトも新造品で、8000rpmまで回る。
どうしてポルシェは、驚異的な4.0L自然吸気6気筒を持ち合わせていながら、わざわざこんな手間をかけたのだろうと、疑問に思うかもしれない。その理由はふたつある。
まず、911GT3スペックのエンジンは、コストがあまりにも高いこと。それを積んでいたら、このクルマの価格は10万ポンド(約1400万円)を超えただろう。
次に、ミドシップレイアウトとするためには、リアエンジンと前後逆に搭載する必要があるため。そうなると、外付けオイルリザーバーを設置するスペースが確保できない。
このニューエンジンの出力は、デュアルマスのフライホイールを備えるショートストロークの6速MTと、機械式LSDを介して、後輪を駆動する。
今回は、ボクスターがベースのスパイダーに、サーキット志向のケイマンGT4と同じメカニズムがはじめて導入された。このクーペ は、ニュルブルクリンクのラップタイムを、先代モデルより12秒短縮したと豪語する。
このタイム短縮のうち、3秒は新型エンジンが稼いだものだとか。残りは、911GT3と同じ倒立ダンパーやコントロールアーム、ボールジョイントを持つ軽量ストラットサスペンションに負うところが大きい。サブフレームもまた、ポルシェの象徴的なGTカーから流用している。
ボクスターの標準モデルと比較すると、718スパイダーの地上高は30mm低く、これ見よがしなフロントスプリッターとリアディフューザーは専用品だ。
車両重量は重くはないが、期待したほど軽くもない。スペック表の数字は、簡易的な手動のソフトトップを採用しているにもかかわらず、先代モデル比で100kg以上の増量となる1420kgだ。
それでも、馬力荷重比はなかなかのもの。トンあたり296psというのは、911カレラSカブリオレをも凌いでいる。