【アウディ・クワトロとランチア・デルタ】ラリーで鍛えた高性能マシン 前編

公開 : 2020.04.26 07:20  更新 : 2020.12.08 11:05

アウディ80を匂わせるプロポーション

両車ともに見た目はタフ。膨らんだフェンダーには、大きなホイールが納まる。より引き締まったスタンスを取るのはデルタ。15インチ・ホイールがボディの4隅に収まり、余分なオーバーハングはない。

並べてしまうとアウディの方は長すぎ、ホイールも小さく見える。1978年のサルーン、アウディ80からメカニカル・レイアウトを受け継いでいることを匂わせるプロポーション。縦置きの5気筒エンジンに前輪駆動がベースとなる。

アウディ・クワトロ 10V
アウディ・クワトロ 10V

まずは40才を迎える白いクワトロから。このUrクワトロは、WR、MB、RRの3世代に分かれている。1980年のWR型に載るのは2144ccの10バルブ直列5気筒。1988年になると2226ccのMB型へとバトンタッチする。

外見からは、エンジンがフロントアクスルからどれだけ前方に出ているのかわからない。賢いセンターデフがトランスミッション後方に取り付けられ、かさばるトランスファーなしに、4輪駆動を実現している。

最高出力は200psと同じだが、MB型には油圧バルブリフターと改良を受けたフュエルインジェクションが採用され、環境には優しい。1989年には、最終型のRRが登場。4バルブヘッドを採用し220psを獲得している。

エドワーズのクワトロは初期のWR型。1986年製で、当初の四角い4灯のヘッドライトではなく、ボディラインと一体の大型レンズを採用したモデルだ。

細身の6J 15インチホイールはロナール製。当時はオプションで7Jのフックス製も選べた。両方で8インチ広げられたフェンダーに合わせてオフセットされている。タイヤサイズは215と珍しく、交換時は同じサイズを探すのが大変だという。

ブーストが掛かった途端に鋭くなる

英国人にとって大きかったのは、1982年にアウディ・クワトロへも右ハンドル車が用意されたことだろう。座り慣れた位置のドライバーズシートは、スタート直後から熱く運転するのにも好適。左ハンドルで評価の振るわなかった内容も、そのまま受け継いでいる。

当時のクワトロの価格はポルシェ911に迫るものだったが、スイッチ類の仕上げは、どう見ても安っぽい。その頃のポルシェのダッシュボードも、今ほど洗練されたものではなかったのだが。

アウディ・クワトロ 10V
アウディ・クワトロ 10V

着座位置は低く、驚くほど寝かされたフロントガラス越しに、長いボンネットを見渡す。1983年以降のクワトロには、デジタルメーターが採用されている。初めは緑色に光ったが、モデル後期はオレンジ色になった。

新車当時はとてもハイテクな仕掛けに感じただろう。でも、視認性が良いとはいえない。現代のデジタルモニターを採用したメーターパネルとは違う。

初期の10バルブのクワトロでも、現代の平均的なホットハッチより速い。穏やかな回転時は、5気筒エンジン特有のサウンドは奇妙なほど静か。

アクセルペダルを踏み倒すと、初期のレスポンスは驚くほど威勢がいい。しかしターボブーストが掛かるまでは本領は見せない。

ブーストが掛かった途端、吸気音と排気音が高まり、鋭く加速を始める。ターボのブローオフ・サウンドを鳴らしながら、クワトロは丘を一気に駆け登った。

続きは後編にて。

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