【アウディ・クワトロ40周年】選りすぐりの5台を乗り比べ 歴代最高のクワトロとは? 前編
公開 : 2020.04.17 11:40
記憶に残る速さ
最初にステアリングを握るのはもちろん初代クワトロだ。
後期の20バルブモデルが新車だった当時テストしたことがあるが、なによりも記憶に残っているのはその驚異的な速さだった。
デビューからすでに10年が経っていたにもかかわらず古さを感じなかった記憶があるが、さすがにいまではその時代を感じないわけにはいかない。
現代の基準から見れば奇妙なドライビングポジションとさらに奇妙なギアレシオ、まるでゲームセンターにあるゲーム機を彷彿とさせるダッシュボードデザイン、さらには大量に使用されているハードプラスティックが時の流れを感じさせる。
ギアボックスはスムースさに欠け、ブーストが掛かるまでの間、低速ではまったく活気のないこのエンジンに対しては、時代が違うとは言え、思わず失望という言葉さえ出て来るかもしれない。
だが、回転上昇に伴い「乱れ打ち」という以外に表現のしようがないサウンドが響き渡ると、数十年前のものとは思えないこのエンジンの素晴らしさに改めて気付かされることになる。
いまも思わず夢中になるほどの速さを感じさせ、空力を無視したようなボディデザインのせいで頭打ちにはなるが、193km/hまでは易々と加速してみせるのだ。
そしてこのクルマのドライビングの楽しさにも変わりはない。
初代クワトロの新車当時であれば四輪駆動モデルならではと言えたグリップもいまでは控え目というべきレベルに留まっており、さらにはアンダーステアも明らかだが、ステアリングフィールそのものは素晴らしく、シャシーバランスも記憶にある以上の見事さだ。
ポルシェによるエンジニアリング
一方、RS2アバントに対してこうした評価を与えることは出来ない。
このモデルに続く数多くのRSバッジを纏った狂気のエステートモデル同様、RS2の真骨頂も直線での速さにある。
そして、初代クワトロ引退後わずか3年で登場したというのに、RS2ははるかに現代的なフィールを備えており、この2台はまったく別の時代のモデルだと感じさせる。
まさにRS2は現代のモデルだと言えるが、このクルマの高い組立品質と使われているマテリアルの見事さは、ポルシェの関与がその理由かも知れない。
当時苦境にあったポルシェは本業以外でも収益を上げるべく、あのメルセデス・ベンツ500Eに続いてこのRS2のようなモデルのエンジニアリングも請け負っていたのだ。
そして、このポルシェによるエンジニアリングが、基本的には同じエンジンでありながら、初代クワトロの220psからRS2では315psへとパワーを引き上げることに成功した理由だろう。
RS2が特別なモデルであることはいまも変わらない。
スタイリングは素晴らしく、たっぷりとしたレカロ製ドライビングシートに腰を下ろして、ホワイトダイヤルに目をやれば、このクルマに対する期待が高まって来る。
26年前にリッター当り142psを達成していたこのエンジンではターボラグが明らかなものの、一旦3500rpmを越えれば、そのエンジンサウンドとパワーバンドの広さには思わず驚かされることになるだろう。
そして、RS2は初代クワトロが193km/hに到達した地点で225km/hに達してみせる。