【今でも刺激的な456ps】フェラーリ308GTB グループB ラリーカーへ試乗
公開 : 2020.04.14 10:20 更新 : 2021.08.05 08:10
鮮やかなイエローのフェラーリ308GTB。車重970kg、最高出力456psを誇るマシンを、英国編集部は手懐けることができるのでしょうか。グループB時代のラリー参戦を目的としたフェラーリに試乗しました。
珍しいグループBラリー仕様の308GTB
フェラーリのレーシングカーと聞いても、大きな驚きはないかもしれない。同様にフェラーリ製のロードマシンと聞いても、目新しさはない。では、フェラーリのラリーカーと聞いたらどうだろう。
このフェラーリ308GTBは、かつてのグループB規定に合わせて作られたクルマ。1980年代に始まった熾烈な競争は加熱しすぎ、ラリーカーは極めて高速で、危険になった。モータースポーツを変えるきっかけともなった。
フェラーリ308GTBのラリーカーは、公式的なプロジェクトではなかった。主に制作していたのは、イタリアのレーシングチーム、ミケロット。1970年代後半に、グループ4に準拠する308を相当数作っている。
世界ラリー選手権(WRC)へグループBが導入され、ランチア・ストラトスの活躍を見たミケロットは、ミドシップのフェラーリも充分に競争力があると考えた。そこで欧州でのラリー選手権出場を目指し、4台の308ラリーを生み出した。1982年には実際に1台が優勝している。
英国では、エンジニアリング企業の代表でレーシングカーの設計やフェラーリを専門とする、トニー・ワーズウィックが同様のアイデアを持っていた。その結果生まれたのが、この黄色い308GTBだ。
現存する右ハンドル車としては唯一の、当時のグループB規定に合うフェラーリ308GTBとなる。
最高出力456psで車重は970kg
フェラーリとしては、英国のラリーカーへも公式に感心を示すことはなかった。だが英国の販売代理店、マラネロ・コンセッショネアは理解を示し、参戦への協力をしている。
「イタリアから部品が届いたと、マラネロ・コンセッショネアから電話がありました。それはわたしたちのための部品でした」 とワーズウィックが振り返る。
実際には、英国でのマシン開発と参戦での成功は、すべてワーズウィックの手にかかっていた。ベースとなったエンジンは、308の3.0Lフラットプレーン・クランクを持つV型8気筒の自然吸気。
エンジンヘッドはワーズウィックのオリジナルで、可能な限りコスワースDFVエンジンの設計に似せたものとした。7500rpmまで吹け上がり、最高出力は456psに届いている。
トランスミッションは1速が離れた位置にある、ドッグレッグの5速マニュアル。もちろん後輪駆動だ。
普通の308GTBでも、これだけの馬力があれば不足はない。標準のクルマでも300ps程度だったのだから。加えてこのクルマの場合、車重は970kgと軽量。
車内をしっかり囲むロールケージが組まれ、剛性も確保。ボディパネルはフロント部分が軽量なカーボンファイバー製で、リア周りはケブラー・カーボンファイバー製。ワーズウィックによれば、これを参考に、フェラーリは同じ素材を1987年発表のF40にも用いたのだという。