【今でも刺激的な456ps】フェラーリ308GTB グループB ラリーカーへ試乗
公開 : 2020.04.14 10:20 更新 : 2021.08.05 08:10
今でも充分にセンセーショナル
燃料タンクは、エンジンの両脇に分割配置される。フロント周りはラジエターとスペアタイヤに専有されている。リアタイヤの後ろにあるのは、小さなオイルタンクだけ。
つまり、308に積まれた重量物の大半は、ホイールベース内に納まっているということ。ホイールベースはストラトスより長いが、一般的なクルマとしては短い方だ。優れたラリーカーになると考えても不思議ではない。
実際そうだった。ワーズウィックは笑顔で、308GTBはとても競争力が高かったと話す。欧州のラリーステージを戦い、トロフィーを持って帰国した、素晴らしい日々が思い出になっているという。
地元の観光協会などが後援してくれ、資金的にも困らなかったらしい。大勢の観衆は、フェラーリがラリーを戦う珍しい姿に熱狂した。
筆者もドライバーズシートへと座った。この308GTBは運転が楽しいというレベルではない。今でも充分に、センセーショナルと呼べるほどだった。
エンジンは鮮烈で、2000rpm以下からでも力強いパワーを発生させる。そのままリミッター目掛けて、リニアにエネルギーを高めていく。
アクセル操作に合わせて奏でるサウンドは、今日のスーパーカーの多くよりも心地良い。加速後のアクセルオフでは、魅了するようなオーバーラン・ノイズが炸裂する。これを超えるクルマが思いつかないほど。
ラリーマシンとして然るべき仕上がり
トランスミッションは、驚くほどカシっと変速が決まる。回転数を合わせる作業が満足感を高める。ブレーキとステアリングは、ラリーマシンとして然るべき仕上がり。速度が上がるほどに、感触が良くなっていく。
身のこなしは目をみはるほど機敏で、グリップ力も良好。ワーズウィックによれば、テールスライドの仕草も温厚なものだという。筆者は、狭いチャムリー城に設けられたスプリントコースで試すことはなかったけれど。
今回の試乗は、英国のチャムリー・パワー&スピードというイベント会場で行った。穏やかな雰囲気の中に、沢山のクルマが集っている。敷地の中には、本気で走行するクルマを見学できる、スプリントコースも設けられている。
現代でもかなり速いと感じる308GTB。当時は、圧倒的なパフォーマンスに感じられただろう。
グループBはいかに人気が高かったのか、なぜ短命に終わったのか、という理由もわかる。クルマの持つ性能を発揮できる機会がなくなるほどに、高性能だったのだ。
現代では、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードやこのチャムリーで、勇姿を毎年見ることができる。ワーズウィックの308GTBだけでなく、多くの過去の競技車両へ、新しい表舞台を提供している。見学の敷居も高くない。
百聞は一見にしかず。まだまだ先となりそうだが、新型ウイルスが落ち着いたのなら、読者も一度機会を作って訪れてみてはいかがだろうか。
※この記事のオリジナルは、2016年に書かれたものです。