【訃報】『無冠の帝王』スターリング・モス卿が90歳で死去 最も偉大な英国人ドライバー
公開 : 2020.04.13 20:50
モータースポーツ界のレジェンド、サー・スターリング・モスが12日、90歳でこの世を去りました。F1世界チャンピオンは逃したものの、ミッレ・ミリアをはじめ数多くのレースで偉大な成績と伝説を残しました。
529戦に出場して212勝
最も偉大な英国人レーシング・ドライバーの1人、サー・スターリング・モスが逝去した。90歳だった。
英国時間の4月12日朝、妻のレディ・モスがデイリー・メール紙に語ったところによると、サー・スターリング・モスは、メイフェア地区にある自宅で、妻の看病のもと長期にわたる療養生活を送っていたという。
F1世界チャンピオンに輝いたことは1度もなかったものの、スターリング卿はモータースポーツ史における最も偉大なドライバーの1人とされている。1950年代から60年代にかけて、彼はF1からスポーツカー・レースまで、異なるカテゴリーのレースで数多くの勝利を挙げる多才ぶりを発揮。1962年にグッドウットで起きた深刻な事故で重症を負ったことにより引退を決意するまで、全529戦に出場して212回の優勝を達成した。
F1に参戦していた1951年から1961年の間、スターリング卿は世界選手権ランキング2位で4度、3位で3度、シーズンを終えている。優勝回数は16。その中には1955年のイギリス・グランプリも含まれる。この母国レースでスターリング卿は、メルセデス・チームのチームメイト、ファン・マヌエル・ファンジオを抑え、F1初優勝を成し遂げた。
耐久レースやラリーでも活躍
F1世界チャンピオンを逃したことから、スターリング卿はしばしば「無冠の帝王」などと呼ばれるが、彼はF1以外のレースでも成功を収めており、モータースポーツにおける最も偉大なオールラウンダーの1人でもあった。1955年には過酷な街道レースとして知られるミッレ・ミリアにメルセデス300SLで出場し、平均速度の新記録を打ち立てて優勝した。1956年のル・マン24時間レースではアストン マーティンDB3Sでクラス優勝。さらにモンテカルロ・ラリーでも1952年にタルボ・サンビームを駆って2位に入ったことさえある。
フルタイムのレーシング・ドライバーを引退した後も、スターリング卿は時折ラリーや耐久レースに参戦を続けた。1980年には英国ツーリングカー選手権でレギュラー・ドライバーとして現役復帰したこともある。
スターリング卿が人々の前に現れなくなったのは、わずか2年前のことだった。2010年に自宅の事故で両足を骨折した後も、英国や時には海外で開催されるモータースポーツ・イベントに姿を見せ、ヒストリックカー・レースに出場することさえあった。グッドウッド・フェステイバル・オブ・スピードでは毎年、かつて共に戦った伝説的なマシンに再び乗り込み、観衆を沸かせた。
「彼は生きている時と同じように、立派な姿で息を引き取りました」と、モス夫人はデイリー・メールに語った。「彼はただ疲れ果てて、美しいその目を閉じたのです。それが最期でした」。