【サンタアガタを味わい尽くす】ランボルギーニ・ウラカン・エボRWD 英国試乗
公開 : 2020.04.16 10:20
現実的なスピードで流れるように楽しめる
このV10は、これまで製造されたロードカー向けのエンジンとして、最も素晴らしいユニットの1基だ。疑う余地はない。
デュアルクラッチのトランスミッションも輝かしい部分。大きく細身なシフトパドルは、弾く度に喜びを感じる。重み付けは丁度良く、超クイックに変速を決めてくれる。痛快なシフトショックを伴い、再び8500rpmのレッドラインめがけて回転数は高まっていく。
サスペンションは、スポーツでは一般道には硬すぎる。コルサは、もろに振動がドライバーを襲う。
穏やかに流したい場合、ストラーダモードを選べばダンパーは柔らかくなり、扱いやすさが向上。トランスミッションはエンジンの太いトルクを活かして、しずしずと仕事をこなしてくれる。
低速域での運転のしやすさは極めて優秀。短いホイールベースと速度を問わず機敏な身のこなしが、市街地でも走らせやすい。一方のアヴェンタドールは、大型タンカーが狭い運河を通るかのようですらある。
このウラカン・エボRWDで最も秀でた特徴といえるのが、より現実的なスピードで、流れるようなドライビングを楽しめること。熱狂度合いも穏やかではあるが。通常のウラカン・エボなら、クルマの本域を味わうには、危険な速度域に足を突っ込む必要がある。
後輪操舵がないから、中速域でのコーナリングはやや緩さを感じられる。一方で前輪のドライブシャフトがない分、切り始めはよりクリーンで軽快。バネ下重量も軽くなっているから、路面の起伏に対する滑らかさでも上だ。
サンタアガタの実力を瑞々しく
前方で車体を引っ張ろうとする力が発生しないことで、リアタイヤがクルマを押し出すような、ぐっと沈み込ませる感覚も備えている。ボディが完璧にフラットに保たれているとはいえない。それでも、リアタイヤで走らせているという満足感は遥かに高い。
アクセルペダルを踏み込みすぎれば、リタイヤはグリップ力以上に回ろうとする。繊細さは、通常のウラカン・エボ以上だ。
グリップ力は凄まじく、完全なオーバーステア状態とするには、重心移動を利用しながらクルマを激しく攻め立てる必要がある。後輪駆動だから、路面状態によってはテールが激しく振られる可能性もある。集中していないと、リカバーは難しいだろう。
フェラーリF8トリブートの方が、オーバーステア状態での遊び心はより寛大。本物のシリアスさ、という点では及ばないとしても。
典型的なランボルギーニより高い勇気が試され、濃密さを味わえるウラカン・エボRWD。サウンドや運動性能以上に、磨き込まれた操縦性こそ、最大のストロングポイントとなる。
ウラカンの購入を考えているなら、ウラカン・エボRWDがディーラーに並ぶまで、待っても良いと思う。サンタアガタの実力が、瑞々しく示されたモデルだ。
ランボルギーニ・ウラカン・エボRWD(欧州仕様)のスペック
価格:16万4400ポンド(2219万円)
全長:4520mm
全幅:1933mm
全高:1165mm
最高速度:325km/h
0-100km/h加速:3.3秒
燃費:7.2km/L
CO2排出量:330g/km
乾燥重量:1389kg
パワートレイン:V型10気筒5204cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:610ps/8000rpm
最大トルク:56.9kg-m/6500rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック