【将来的な復活は?】アウディTT 新旧乗り比べ 感じるのは知性 後編
公開 : 2020.04.22 19:20
現行モデル限りでの廃止が発表されたアウディTTですが、強いインパクトを残した初代と最後のTTとなる3代目を乗り比べてみました。それぞれに素晴らしいこの2台ですが、なによりも印象的だったのはその知性だったようです。
独自の知性
2.0Lエンジンから197psを発揮するこの前輪駆動モデルは、3代目TTのエントリー仕様であり、ドライビングのスリルではなくこのクルマの存在を知らしめるためのモデルだと言える。
だが、このクルマがTT熟成の過程を明らかにしてくれたことで、トップレンジではなくこの仕様を選んでくれたアウディに感謝することとなった
さまざまなモデルで使用されているフォルクスワーゲングループのMQBプラットフォームを与えられた現行TTは、強力なフロントグリップとボディロールの少なさが特徴であり、強固なボディ剛性と素晴らしい洗練を感じさせる。
後席にもなんとか実用に耐え得るリアシートを手に入れたことで、初代よりも大きく成長したモデルに感じる理由も理解出来る。
だが、初代TTの見事なシフトフィールのマニュアルギアボックスに替えて、このクルマが積むのはデュアルクラッチトランスミッションであり、つねに速く走ろうと思わせるわけではないが、それでも毎日のドライビングでは十分な喜びを感じさせてくれる。
さらに、3代目TTであれば2代目には欠けていた知性を感じることも出来る。
このクルマは初代ほどの強い印象を残そうとしたり、初代と同じような存在になろうとしたことなどは一度もなかったのであり、むしろこのクルマには独自の知性が備わっていると言えるだろう。
知性と感情に訴えるモデル
唯一のデジタルスクリーンをステアリングホイールの背後に置く以外、ダッシュボード上に視線を惑わすようなディスプレーなど一切ない、このクルマの見事なまでに整然としたインテリアデザインの素晴らしさはいまも変わらない。
見事なルックスをした魅力的な1台だ。
そして、このクルマはエントリーモデルこそが、トップレンジよりもつねに理に適った選択だということを思い出させてくれる存在でもある。
このクルマ以上のパフォーマンスを誇るTTのなかにも非常に優れたモデルは存在するが、一方でそうしたモデルこそが、もともとは前輪駆動のこのアウディがどれほど純粋なスポーツカーとかけ離れた存在かということを露呈して来たのだ。
本質的にTTとは、手ごろな価格でそれなりの刺激と魅力を感じさせるホットハッチに近い存在だと言えるだろう。
つまり、TTとは現代のフォード・カプリとでも呼ぶべき存在であり、ドライバーの扱いやすさを優先して生み出されたモデルなのだ。
もし、アウディからEVやさらに先進的なTTの後継モデルが登場したなら、彼らはこのクルマほどの知性と感情に訴える力を持ち得るのかという難題に直面することになるだろう。