【麻薬と不正利用 ロータスの関与】デロリアンDMC-12 開発と倒産の裏話 前編
公開 : 2020.04.23 10:20 更新 : 2020.12.08 11:05
創業者の信用失墜とともに会社も倒産
180万ドル(2億円)のコカイン取引容疑により、ジョンZデロリアンはFBIの捜査を受け、デロリアン社は望まぬ注目を集めた。当時の英国首相、マーガレット・サッチャー首相が決定した資金援助に対しても、不信感は高まった。
ジョンZデロリアンは最終的に無罪となるが、彼の弁護士は、警察がしかけた罠にはまった、と主張した。しかしデロリアン・モーター・カンパニーは、創業者の信用失墜と合わせるように、1984年に倒産してしまう。
その翌年、1985年に公開された映画、バック・トゥ・ザ・フューチャーはDMC-12を銀幕の世界へと押し上げた。ハリウッド出演がもう少し早ければ、もしかすればデロリアン社は立ち直れたかもしれない。
工場へ大きく依存していた当時の北アイルランドでは、数千人が大きな影響を受けた。デロリアンの開発から製造に関わった、多くの努力は忘れ去られつつあるが、クルマ自体は今も高い注目を集めているのが対照的だ。
このDMC-12は、現在は未来の自律運転技術の開発用車両としても選ばれている。アメリカ・スタンフォード大学では、EVのデロリアンを開発し、事故を回避するために意図的にドリフトさせるアイデアを研究している。
テスト車両はテールスライドのマルチ・アクチュエーターのベース車両となっている。フラックス・キャパシターの研究だけではない。
デロリアン工場の施工に携わった内装職人
熱い期待を集めていたクルマを実現するために、全力を投じた人々。工場の建設に関わった人。潰れかかったデロリアン社を、画期的な計画で立て直そうとした人。今回は、ジョンZデロリアンの背後にいた人物を、インタビュー形式で紹介したい。
ジョー・マレー 内装職人
内相職人のジョー・マレーは振り返る。「わたしは室内装飾を担当していました、つまり、社内のあらゆる場所に立ち入れました」 豪華なカーペットが敷かれた、ジョンZデロリアンのオフィスも施工したという。
「ユニークだと思ったのが、個人用のバスルームがあったことと、トイレにも電話が設置されていたこと。とても印象に残ったことの1つです」 と話すマレー。
ジョンZデロリアンはアメリカの芸能界とも人脈があり、テレビ司会者のジョニー・カーソンが工場を訪れたこともあったという。現地、アイルランドのコメディアンではなく。
デロリアン社は、マレーにとって重要な仕事先だった。多くの従業員も同様だろう。マレーの妻は、DMC-12のシートを製造していたそうだ。
デロリアン社へ対する献身的な気持ちは今も変わらない。今でも彼は、かなりの量のカタログや写真、記念品や資料を収集している。デロリアン・プロジェクトに対する強い思いと、失敗に終わった悲しみもが伝わってきた。
後編では、開発に関わったロータスのCEOを務めていた人物と、デロリアン社の従業員から話を聞いてみたい。