【メガーヌR.S.のスイートスポット】ルノー・メガーヌR.S.280(3) 長期テスト
公開 : 2020.04.25 11:50 更新 : 2021.03.05 21:34
フランス産ホットハッチの代表といえる、ルノー・メガーヌR.S.。不動の王者、ゴルフGTIにどれだけ迫っているのか、長期テストで検証します。選んだのはベーシック・グレード。上位グレードとの差も気になります。
積算5256km 他のホットハッチとの比較
数台のややプレミアム寄りのホットハッチを運転した後、メガーヌR.S.に座る。走行性能だけでなく、得られるフィードバックが優れていることに改めて気付き、良い気分になった。
しばらくメガーヌR.S.に乗らないでいると、どれだけエキサイティングなクルマなのかを再発見できる。ほかのホットハッチより、熱い気持ちをぶつけることができる。
積算6759km R.S.280とトロフィー、R
これまで一般道で試乗を重ねてきた、ルノー・メガーヌR.S.280。この長期テスト車両に乗った誰もが、迅速で正確な修正操作が必要だと認めている。
今回は、ロンドンを出発してグレートブリテン島の西、アングルシー・サーキットを目指した。その目的は、毎年恒例の英国ベスト・ドライバーズカー選手権のサポート車両を務めること。
長旅に加えてサーキット走行もルノーで可能だという、よこしまな目的もあった。さらに、メガーヌR.S.トロフィーと、R.S.トロフィーRを同時に用意できるという、またとない機会を組むこともできた。ありがとう、ソーンダース。
長期テストのルノー・メガーヌR.S.280は、シリーズの中では最もパワーが少なく安価で、スポーツシャシーの選択が可能なモデル。メガーヌR.S.の中でどれがスイートスポットなのか、確かめてみたい。
一般道では、280はR.S.シリーズの中では最も柔らかい。ドライバーに寛容な乗り心地だ。サーキットでフルスロットルのアタックをしたら、その柔らかさが生む妥協はどの程度だろうか。
サーキット走行も実力の範疇
LSDや引き締まったカップシャシーが付かず、トロフィーより劣るパワーが織りなす走りの違いとは。メガーヌR.S.のオーナーなら気になるだろう。これを確認するのに、アングルシー・サーキットは最高の場所だった。
メガーヌの4輪操舵システムは、調整が必要だとすぐに分かった。レースモードを選ぶと、100km/hまでは前輪と逆位相に後輪が切られる。
そのためテクニカルコーナーでは、ショッピングカートのように急激にターンインする傾向がある。挙動は必ずしも予想できるものでもない。
コーナーへ侵入すると、クルマのフロントノーズは頂点めがけて向きを変える。その直後、テールがフロントタイヤより前へ出ようとする感覚もある。
自然なフィーリングではない。ただ、クルマの動きを学んでしまえば、R.S.280の運転は楽しい。ドライバーとの一体感は完全ではなくても、サーキット走行も実力の範疇だ。
LSDが付いていないから、アンダーステアも発生しやすい。ボディロールの制御も完全とはいえない。それでもメガーヌR.S.280は、1分23秒3というラップタイムを記録した。
続いてはメガーヌR.S.トロフィー。走り出すと、サーキットではより良いことがわかる。4輪操舵システムへの対処が残るものの、コーナリング時の姿勢はフラット。フロントタイヤの食いつきも、遥かに頼もしい。
パワーとトルクで上回る分、コーナー出口での脱出加速も力強い。ストレートでも速度を一層乗せていく。
今回持ち込んだトロフィーには、6速MTではなく、6速デュアルクラッチATが付いていた。最もベストな組み合わせではないが、ヒール&トウで気を取られる心配はいらない。ギリギリまで我慢して、強くブレーキペダルを踏み込める。