【スーパーカー級をお値打ちで】メルセデス・ベンツCLK 55 AMG 英国版中古車ガイド

公開 : 2020.04.25 10:20  更新 : 2021.07.12 18:46

控えめなデザインのボディにハイパワーエンジンを搭載した、2代目CLK 55 AMG。スーパーカー級の性能がバーゲンプライスで手に入る、目玉モデルといえるでしょう。高性能が故の注意点を、英国編集部が解説します。

職人が手作業で仕上げたエンジン

text:John Evans(ジョン・エバンス)
translation:KENJI Nakajima(中嶋健治)

 
2002年から2006年にかけて製造された、メルセデス・ベンツCLK 55 AMG。CLKの形をしたスーパーカーが、今となってはバーゲンプライスで手に入る。初代よりさらにパワフルな、2代目CLK AMGのことだ。

AMGの伝統に則って、V8エンジンは職人の手によって組み立てられた。エンジンのロッカーカバーには、担当した職人の名前が刻印されたプレートがあしらわれる。売買される時も、その職人の名前が出てくることが多い。

メルセデス・ベンツCLK 55 AMG(2002年〜2006年・英国仕様)
メルセデス・ベンツCLK 55 AMG(2002年〜2006年・英国仕様)

筆者が触れたいのは、AMGエンジンビルダーの1人、ロサリオ・インドール。CLK 55 AMGを一度運転してみれば、なぜ彼が高く評価されているのか、理解できるだろう。

確かに電気系統やボディのサビなど、悩みも少なくはない。だが、55のエンジンに関するトラブルは、ほとんどない。

エンジンに組み合わされるのは5速ATで、後輪駆動。9速ATが当たり前の時代、少し物足りない段数だが、より強力なSクラスのV型12気筒エンジンにも耐えるタフさがある。

AMGらしく、とても滑らかなスピードシフト・システムも備える。シフトレバーを横に倒すか、F1のようにステアリングホイールに取り付けられたシフトパドルを弾けば、素早い変速を楽しめる。

無駄のない引き締まったボディには、クーペとコンバーチブルが用意された。シャシーは当時のCクラスのものだが、補強されている。凹凸を超えれば、コンバーチブルの場合は特に、剛性が増していることが実感できる。

サスペンションはスプリングが強化され、アンチロールバーは大径化。ブッシュ類も強化品だ。エンジンは重く、フロントのコントロールアームは消耗が激しい。フロントタイヤも、リアタイヤと同じペースで溝がなくなる。

控えめで高級感漂う雰囲気に惹かれる

スーパーカーに牙をむく高性能にも関わらず、CLK 55 AMGの見た目は控えめ。18インチホイールと、控えめなトランクリッドのスポイラー、2本出しのマフラカッターくらいが違いを主張する部分。

当時のライバル、M3の方が雄叫びも元気で、激しいドライビングを味わえる。だが今となっては、CLK 55 AMGの一歩引いた感じが中古車好きを惹き付ける。

メルセデス・ベンツCLK 55 AMG(2002年〜2006年・英国仕様)
メルセデス・ベンツCLK 55 AMG(2002年〜2006年・英国仕様)

オーナーの1人、マーク・アンソニーは、より高級感のあるイメージに惹かれ、M3ではなくCLKを選んだという。

プレミアム感漂う雰囲気は、インテリアも同じ。2トーンのレザー内装に、クロームメッキのリングが付いたメーターパネルが華やか。AMGと刻印されたサイドシルプレートが、ドライバーを迎えてくれる。

新車当時はポルシェ911より高価だった。理想のオプションが装備されていれば、いうこともないだろう。探す価値があるのは、カーボンとアルミの内装パッケージだと思う。

古い歴史を持つメルセデス・ベンツだけあって、古いAMGにも精通したスペシャルショップが英国には存在する。特に気をつけたいのは電気系統の不具合。これを調査・修理できるのは、まともなダイアグノーシスと、確かな経験だけ。

CLK 55 AMGは素晴らしいモデルだが、同時期のM3ほどの強い存在感は残せていない。おかげで、価格もそれを反映している。ただし、2004年に登場した582psの5.4LスーパーチャージドV8を積んだ55だけは、珍しく高い。

良好なクルマを見つけて、適切な値段で購入すること。そうすれば、ロサリオ・インドールが生んだマシンは、生涯の友となるだろう。

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