【なぜ?】フォード・マスタング、同じスポーツクーペのフェアレディZより人気が長続きするワケ
公開 : 2020.04.25 05:50 更新 : 2020.04.26 00:32
マスタング、第2〜4世代までの迷走
70年代に入り、排気ガス規制とオイルショックによって、従来の「アメ車」は事実上、死滅した。
マスタングもモデル名こそ残ったが、第2世代は初代とは似ても似つかぬ、コンパクトカーになってしまった。
筆者(桃田健史)は第2世代とリアルタイムで接していたが、スポーティ性は感じることができず、当時でも初代マッハワンへの憧れの方が強かった。
80年代から90年代は、アメリカ各地で第3世代と第4世代に数多く触れた。
フォード主催の試乗会や発表会、レーシングスクールでの教習車、チューニング系のロードゴーイングカー、またレンタカーでの利用など、様々な機会で乗ったが、同等のボディサイズのスポーティクーペとなると、フェアレディZの方が魅力的だと感じていた。
それでも、アメリカンクーペが購入したいと思い、米東部のノースキャロライナを本拠地としていた頃、マスタングよりひと回り大きなサンダーバード(通所Tバード)に乗っていた。
マスタングも一応、ショッピングリストに載せていて、ディーラー各所で実際に商談もしたのだが……。
当時、筆者はNASCARに関わっていたので、フォードのマシンがサンダーバードをベースとしていたことも、マスタングを選ばなかった大きな理由だった。
こうしたマスタングのイメージがその後、一気に変わる
マッスルカーへの原点回帰が奏功した
2004年1月の北米国際自動車ショー(通称デトロイトショー)。開催会場であるコボセンターに隣接する、フォード専用の発表会スペースは熱気に包まれていた。
舞台に登場したのは、第4世代とは似ても似つかぬ、初代への原点回帰をモチーフとした第5世代だった。
ポニーカーではなく、シェルビー系ハイパフォーマンスを中核とするマッスルカーへの原点回帰である。
第5世代のチーフエンジニアは、前職がフォードインディカープロジェクトのマネージャーであったことで、筆者はレース場で何度も面識があり、第5世代の商品企画について詳しく聞いた。
彼は「今後、シェルビーバージョンなどのラインナップを拡充する予定です。マスタングは初代にように、男女を問わず、幅広い年齢層対して、間口を広げたモデルになるべきだと思っています」と将来構想を説明した。
この考え方が、第6世代へと繋がっているのだ。
このように、マスタングは商品性が定まらない時期など、紆余曲折を経て現在の姿を実現している。
見方を変えると、時代背景によって商品性を変えたことが、人気を維持する秘訣といえるかもしれない。
第6世代では、ベース車でのエコブーストから、パイパフォーマンス系ではシェルビーGT350、GT350R、GT500トラックパック等、多彩なバリエーションを取り揃えている。