【貴重な成功物語】英国製カローラの故郷 トヨタ・バーナストン工場を訪問 後編
公開 : 2020.05.03 18:50 更新 : 2021.01.28 16:58
安全が第一
アンドンは生産の遅れを意味するため、ラインマネージャーはアンドンが発する警報音を毛嫌いしていると思うかも知れないが、実際には彼らはこうした音を音楽のように思っている。
「生産は早いペースで行われています」と、クロスビーは言う。
「ですが、スタッフには安全が第一であり、それはお客様に引き渡す車両と作業者の双方についてだということを明確にしています。その次が品質であり、生産する車両はつねに正しい品質を備えている必要があります」
「作業者が正しい品質を判断出来るとともに、確実に異常を発見出来るようにしています」
「もし彼らが作業中に何かおかしいと感じたら、アンドンの紐を引くことで問題に対処することが出来るのです」
TMUKでは自らが対処可能な問題に注力することで、ブレグジットのような、彼らにはどうすることも出来ない問題にも対応しようとしており、トップが将来的な英国とEUの貿易協定に望むことは明確だ。
「関税ゼロと可能な限りスムースな通関作業、そして統一された規制です」と、クロスビーは話す。
素晴らしいニュース
相応しい合意が得られなかった場合、バーナストンの将来も安泰ではないという懸念の声もあるが、それでも英国にある他の工場とは違い、それで雇用や投資が失われるということはなさそうだ。
事実、将来に向けての明るい兆しも出てきており、昨年資本提携を発表したトヨタとスズキ、両社の合意の一環として、今年後半にはバーナストンでTNGAプラットフォームを採用したスズキの車両生産がスタートすることになっている。
「確かに、将来が見通せない状態が続いたここ数年は厳しい時間でした」と、クロスビーも認めている。
「それでも、その時間をわれわれはスタッフの品質や安全に対する知識の向上と、スキルアップに費やしてきたのです」
「そうすることで、直面する課題に対応するとともに、将来に向けた準備を整えることが出来ます」
取材時点では、新型コロナウイルスの感染拡大が自動車産業と世界に与える影響の大きさを正確に把握することは不可能だった。
それでも、いずれバーナストンの生産ラインは再開される見込みであり、この工場の成功物語はまだ続くことになりそうだ。
素晴らしいニュースだろう。
番外編2:品質管理の道場
トヨタで品質管理を担当するには、まずは自らの品質管理能力が試されることになるが、この長い伝統を誇る品質管理のスキルはバーナストンにある道場で学ぶことが出来る。
ただ、その道場とは静けさを湛えた木造建築の寺院ではなく、どこにでもありそうな工場の建物の中にある。
ここで、スタッフはボディパネルにある、ほとんど見分けのつかないキズや汚れを発見する術を学ぶのだ。
今回、特別に品質管理能力を試す機会を得ることが出来た。
スクリーン上にドアの巨大な写真が表示されると、決められたルート通りに手を動かして、塗装面のキズを発見する方法をレクチャーされる。
パネル1枚あたりのチェック時間は7秒だ。
いくつかのキズは見つけることが出来たが、見逃したものはそうと教えられた後でも発見するのが難しかった。
つまり、このボディパネル同様、わたしも検査には不合格ということだ。