【夢に描いた2ドアクーペを現実に】シトロエンDSクーペ・グラン・パレ 前編
公開 : 2020.05.02 07:20 更新 : 2021.03.05 21:42
個性は残しつつより高いレベルへ
さらに続けるゴドフロイ。「サイドウインドウを完全に下ろせる、ピラーのない大きなグラスエリアが良いと思いました。開放的で、オープンカーより快適に運転できます」
初期のデザインは2012年に描かれた。それをコンピューターで展開した。細いパイプでフレームを組んで基本的なボディ形状を生み出すと、細かな造形を詰めていった。
最終的なデザインは、手作業で丁寧にポリウレタンフォームを削り出して仕上げた。DSのデザイナー、ベルトーニが石膏を削り出してデザインした手法に合わせるように。
「わたしは彫刻家でもあると実感しました。リアセクションの造形作業がとても楽しかったのです。2つのボディ面が、美しいカーブでつながっています」 ゴドフロイが作業時を思い返す。
「わたしとしては、もっと大きなカーブをリアフェンダー周りに与えたいと思っていました。丸みを持たせたリアセクションにすれば、滑らかなラインでエレガントな光の反射を生み出せます」
「シャプロン社が手掛けていたカブリオレは、フェンダーの造形がずっとフラットです。このDSグラン・パレは、ウエストラインが大きく絞られています。DSオリジナルの個性は残しつつ、より高いレベルのデザインへ引き上げることを目的としました」 造形への思考がプロらしい。
ドアから後ろのボディはFRPで一新
DSグラン・パレはリアデッキが長く伸びるが、コンパクトなグラスエリアを生み出すために、必然的に生まれたもの。新たに造形されたボディデザインは、オリジナルと完璧なマッチングを見せている。
デザインが決定すると、クリストフが1968年製のDS21キャブレター・サルーンからクーペへとコンバージョンさせる作業を進めた。フロントフェンダーから後ろのボディパネルは、グラスファイバーで完全に作り直されてある。
新しいボディは、1963年に導入されたスチール製のフロントエンド部分と結合。ドアもスチール製の補強材入りで10cm延長し、グラスファイバーで造形してある。
ドアヒンジとキャッチャーは、作りの良い現代的な部品を用いている。ゴドフロイは、ドアが閉まる時のドシンと重みのある質感に、誇りを感じている。
ボディを支えるシャシーも補強され、サイドシルも強化。ドア開口部の後ろ部分には、スチール製のA型フレームが入り、ボディ中央とルーフを支持する。長いトランクリッドのクロージングパネルも、スチール製だ。
グラスエリアはオリジナルのDSより低められ、形状はまったく新しい。フロントピラーとリアピラーは強度が高められ、ルーフの内側にはボディ剛性を高めるため、鋼管フレームが仕込まれている。
この続きは後編にて。