【詳細データテスト】 ジャガーFタイプ V8の延命は大歓迎 FRならなおよし
公開 : 2020.05.09 11:50 更新 : 2021.02.19 04:33
走り ★★★★★★★★★☆
今から3年前、ジャガーが彼らのスポーツカーに4気筒搭載バージョンを追加した際には、賛否両論が巻き起こった。それでも、少なくともV8スーパーチャージャーを積んだ仕様も残されたことを踏まえれば、じつにスマートな判断だったといえる。
しかし、このV8の製造拠点について、先行きは不透明だ。これまではフォードのブリジェンド工場から供給されていたが、このプラントは年内にも閉鎖される見通し。生産ラインがウォルバーハンプトンにあるジャガー・ランドローバーのエンジン生産工場へ移されるという憶測もあるが、不確かな噂の域を出ない。
とりあえず、その件について今回は深く突っ込まないことにしよう。ただただ、正しい決定がなされることを信じるのみだ。なにしろ現場の市販エンジンで、これほど魅力的な爆音と野蛮なまでの力強さをあわせ持ち、ここまで目覚ましい効果を上げているものはまずないのだから。
このエンジンによって、Fタイプは多様性を手に入れている。スポーツカーであるのはもちろんだが、ホットロッドのようなにぎやかさや、時としてスーパーカーすら打ち負かすほどの移動ペースも発揮するのだ。
このFタイプRのパフォーマンスはとてつもないレベルにあるが、最新のV8ターボとは異なる。性能を最大限引き出すにはエンジン回転をかなり高めなければならないので、ポルシェやメルセデスAMGのように高いギアで発進できる類のクルマではないのだ。
それらと比較すれば、2000rpm付近ではもたつきがあり、レスポンスが鈍い。それを補うには、ややせわしなくギアボックスにキックダウンを求めることが必要になる。
とはいえ、4000rpmを超えたときのパワーデリバリーは、低回転域での犠牲を払うに値するものだ。公道上で全開にできる機会は滅多にないが、そのチャンスを得られれば、思い切り楽しめるはずだ。
このAJ-V8は獰猛さと劇的なサウンドを備える。それは大袈裟で、子どもじみていると感じるひとさえいそうなほどだが、身体にガソリンが流れていると自負するようなクルマ好きなら、その限りではないだろう。ただ、オーバーランしたときに弾けたり唸ったりしがちな点だけは、やりすぎだと考えるテスターもいた。
ギアボックスは、SレンジやDレンジに入れっぱなしにしたときより、マニュアルモードのほうが滑らかで直観的なフィールをみせるのは疑う余地のないところ。その点では、よくできたデュアルクラッチのパフォーマンスカー向けトランスミッションにやや後れを取る。
パドルシフトは十分にクイック。また、自分のタイミングで変速できるので、本気で操作すればより高いパフォーマンスを引き出すことができる。
鋳鉄ディスクを装着したテスト車の場合、ブレーキペダルはプログレッシブさもフィールも非常にいい。ただし、極限状態での耐フェード性を試す機会は設けられなかった。