【ダットサン240Z】日産の放った初回ホームラン フェアレディZ 後編

公開 : 2020.05.17 16:50  更新 : 2020.12.08 11:04

1969年、お手頃なスポーツカーとして登場したダットサン240Z。ライバルとは一味違う個性で、高い注目を集めました。50年経った今でも、その輝きは色あせません。英国日産のコレクションの貴重な1台に試乗しました。

当時の満点を得た車内の快適性

text:Greg Macleman(グレッグ・マクレマン)
photo:Luc Lacey(リュク・レーシー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
1970年代のグランドツアラーでさえ、ダットサン240Zに並ぶインテリア設計が施されたクルマは多くはない。長いドアは乗降性に優れ、低い位置に据えられた2脚のビニールレザー張りのシートは快適で、すぐに馴染む。

背もたれが高く形の良いシートは、マツダMX-5(ロードスター)のものを彷彿とさせる。当時のロード&トラックス誌のテスターの身長は190cm近くあったが、車内の快適性に10点満点中10点を与えるほど。乗ってみると、今でも充分にうなずける。

ダットサン240Z(日産フェアレディZ・S30型/1969年−1973年)
ダットサン240Z(日産フェアレディZ・S30型/1969年−1973年)

ドライビングポジションは完璧。見事な造形のダッシュボードの深い位置に、メーター類が並ぶ。オイルが染みたウッド製のステアリングホイールの先に、長く、造形の映えるボンネットが伸びる。

ここ10年の間に、取引価格が驚くほど跳ね上がったS30型のフェアレディZ。同時期の英国製直6エンジンを搭載した、トライアンフGT6やMGC GTなどのクラシック・スポーツと大きな差が付いてしまった。

最良の状態のダットサン240Zを、終日楽しめる機会はなかなかない。しかも日産のヘリテイジ・コレクションの車両だから、相当に貴重な体験だといえる。

英国日産が所有するのは、サンシャイン・イエローに塗られたクルマで、新車時の通りにレストアを受けている。だが、いくつかのモディファイはあえて残されたという。

レーシーなミニライト・ホイールや、当時物のアフターマーケット製アップグレード部品の一部は付いたままだ。キャブレターへ燃料を送るためにアクセルを数度踏み込んで、キーを回すと、工場出荷時とは異なる別の部分も明らかになった。

素晴らしい6気筒サウンドに包まれる

目覚めのひと吠えのあと、明確な吸気ノイズが聞こえる。SU社のライセンスを受けて作られた日立製キャブレターではなく、 40DCOEのトリプル・ウェーバーに交換されている証だ。

冷間時はアイドリングが不安定で、エンジンが温まるまではアクセルを軽くあおって回転を保つ。夢中にさせてくれるノイズに包まれながら、キャブレターは不足のない燃料をエンジンに供給してくれている。

ダットサン240Z(日産フェアレディZ・S30型/1969年−1973年)
ダットサン240Z(日産フェアレディZ・S30型/1969年−1973年)

当時のダットサンが公表していた、153ps以上は出ているだろう。0-96km/h加速8秒、最高速度201km/hは、疑う必要がない。

2.4Lの直列6気筒エンジンの反応は鋭い。トルクも太く、道に出れば充分に速く感じられる。アクセルペダルに力を込めると、たくましく車体が引っ張られる。

5500rpmまでリニアにパワーが増すが、それを超えるとトリプル・ウェーバーが本領を発揮する。7000rpmのレッドライン目掛けて、最高のフィーリングを味わわせてくれる。同時に、素晴らしい6気筒ユニットのサウンドに包まれる。

回転数が高まるほど、音響の迫力も増していく。どこか荒々しく刺激に欠ける音色から、背筋がゾクゾクするような音質へと変わっていく。

フェアレディZの設計者は、派手なエグゾーストノートはコンセプトに合致しないと考えていた。ボリュームが抑えめな理由だ。そのかわり、ボンネットの下から沸き立つ響きが強調されている。

ステアリングは馴染みにくい部分。初期の設計では直進性を高めるため、キャスター角は6度に設定されていた。その結果、操舵にはポルシェ911の2倍の力が必要となった。量産時には3度へ減らされたが、低速域では驚くほどステアリングが重い。

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

人気記事